• 更新日:2023.03.10
  • 作成日:2023.01.18

地球温暖化防止の切り札に?ZEBで得られるメリットと効果とは

地球温暖化対策として、日本は2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすることによる、脱炭素社会の実現を宣言しました。

上記にあわせて事務所ビルや商業施設などは、二酸化炭素排出量を2013年度比51%削減するという目標が設定されました。*1
これによりZEB化によるカーボンニュートラルの実現が求められています。

今回はそんなZEBについての概要と実現するための手法を解説します。

ぜひ最後までお読みください。

ZEBの概要

ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称です。ZEBとは、従来通りの快適な室内環境を維持しながら建物の年間当たりの消費エネルギーがゼロになるように考慮した建物のことを指します。

「消費エネルギーをゼロになんてできるの?」と感じた方もいるかもしれません。実はそこが大きなポイントなのです。

「Net」は「正味・実質」を意味します。つまり消費エネルギーを完全にゼロにするわけではなく、消費するエネルギーを創り出すエネルギーと相殺し、消費量を実質ゼロにした建物をZEBといいます。

ZEBのメリット

ZEBを実現することで得られるメリットは消費エネルギー量を削減できる点以外にも存在します。

具体的には以下の3点が挙げられます。

・災害時の事業継続性の向上
・不動産価値の向上
・社会的評価が得られる

それぞれについて、データを交えて詳しく見てみましょう。

災害時の事業継続性の向上

ZEB化のメリットとして、災害時の事業継続性の向上が挙げられます。

以下の図は内閣府の調査データです。この図からは東日本大震災で重要な業務が停止した理由の半数が停電のためであることが読み取れます。

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引用)内閣府「企業の事業継続の取組に関する実態調査」について p.10

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/topics/pdf/kentoukai12_09.pdf

災害とはいえ、他社が事業を継続できているのに自社が業務停止せざるを得ない状況となると、顧客流出のリスクも十分考えられるでしょう。
逆に停電を伴う災害時も事業が継続できる企業は、取引先の信用を得られる可能性があります。

ZEB実現のために創エネ設備を取り入れた建物は、停電時も事業を継続できる可能性が高いため、先に述べたメリットが期待できるでしょう。

不動産価値の向上

2つ目のメリットは、テナント需要の向上が期待できる点です。

以下の図は東京23区内のオフィスビルを対象にした環境認証有無による成約賃料の比較を表しています。

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引用)一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター Practical Study & Research
第4回 これからの不動産市場における 環境マネジメントの重要性 p.60

https://www.ibec.or.jp/CASBEE/outline/pdf/ARES_No25_p58.pdf

この図によると環境認証ありの物件は、なしの場合と比べ、平均の成約賃料がおよそ1.5倍高いことが読み取れます。

賃料が上がるということは、テナントなどの需要が高く、不動産価値が向上していることを客観的に示していると言えるでしょう。

社会的評価が得られる

近年のSDGsへの関心の高まりに合わせて、建物の低炭素化は社会的に高い評価を得られる効果が期待できます。
また近年の消費行動は「イミ消費」も増加してきており、社会的・文化的意味を見出すことで興味を惹かれる消費者が増加中です。*2

このことはデータからも読み取れます。マネックス証券のアンケート調査によると「社会貢献を行っている企業に投資したいか」との問いに対して、既に投資している人を含め約半数が投資をしたいと答えています。*3

社会的評価は企業の業績において、決して無関係な事ではなくなりつつあるのです。

ZEBを実現するための3つの方法

建物の消費エネルギーを減らすための方法はさまざまな視点、分野に存在します。
これらを上手に組み合わせることで、ZEBの実現が可能です。

具体的な手法は以下の3点に分かれます。
・創エネ
・建築設計
・設備設計

それぞれ詳しく解説します。

創エネ

太陽光パネルなどにより自らエネルギーを作り出すことが創エネです。
一般的にはクリーンエネルギーのことを指し、太陽光発電以外に風力発電、燃料電池などが挙げられます。

オフィスビルの場合、屋上に太陽光パネルを設置するのが一般的です。ビルによっては設置面積が限られるケースも想定されるため、高効率パネルの採用を検討しましょう。

また電気エネルギー以外にも、太陽熱や地中熱などの熱エネルギーを利用した冷暖房や給湯なども活用可能です。

建築設計

ZEBを実現するための方法の一つに、建築設計段階で行う手法があります。具体的には高断熱化、日射遮蔽・昼光利用などです。

高断熱化は名前の通り、建物の断熱性能を高めることです。断熱性能は断熱材の種類、厚みを変えることで高められます。
日射遮蔽・昼光利用も消費エネルギーを抑える有効な手段です。

夏期における太陽光から受ける熱の約7割が、窓などの開口部から建物内に入り込みます。*4
この熱の侵入を抑えることで冷暖房の効率が上がり、省エネルギーに繋がります。逆に冬期は太陽光による熱を建物内に取り込めば、暖房時の消費エネルギーを抑える効果が期待できるでしょう。

設備設計

設備設計はZEB実現において比較的手軽に省エネが可能な手法です。
建物における消費エネルギーの大部分が設備機器による消費であることから、機器の効率を上げることで省エネが期待できるためです。

ここでデータを見てみましょう。以下の図は経済産業省が発表した建物用途別の消費エネルギーの割合を表したものです。

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引用)経済産業省 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) の実現と展開について p.20

https://www.jraia.or.jp/member/seifu/pdf/mite-20091224_ref1-2.pdf

用途によって割合は様々ですが、以下の設備がエネルギー消費の大部分を占めています。
・冷暖房熱源用
・空調
・照明器具、コンセント
・給湯

これらの機器を可能なものから高効率化することで、エネルギーの削減が期待できます。

たとえば照明器具の場合、一般電球から電球型LEDに変更すると消費電力が1/4から1/6まで抑えることが可能です。*5

他の設備機器も年々高効率な機器が発表されているため、設備設計による消費エネルギーの削減は大きな効果が期待できるでしょう。

既存建物も改修で導入可能

ここまでの内容を読んで、環境負荷を抑えるためには新築でなければ効果が薄いと感じた方も多いかもしれません。

しかしこれらの対策は、既存建物でも決して難しくはありません。
先述のように電球をLEDに変更する他、日射遮蔽のために内付けルーバーやブラインドの取付け、エアコンを高効率タイプへ交換する改修などは比較的簡単に行えます。

これらの方法を組み合わせれば、状況によりZEBの基準を満たすことは十分可能でしょう。

ZEBは達成状況により4段階に分けられる

なおZEBの基準には、達成状況に応じて4段階のステップが設定されています。

・ZEB
・Nearly ZEB
・ZEB ready
・ZEB Oriented

それぞれ省エネと創エネでの削減基準が定められており、比較的達成しやすい基準である「ZEB Oriented」から正味ゼロ達成の「ZEB」まで段階的に設定されています。

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引用)環境省 ZEB・PORTAL[ゼブ・ポータル]

https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/05.html

まとめ

ZEBは消費エネルギーの削減以外に、災害時の事業継続性の向上、不動産価値の向上、社会的評価が得られるなど、さまざまなメリットが存在します。

特に注目すべきは消費者も含め、低炭素化社会、持続可能な社会の実現に注目している点です。これによりZEB化ビルのような環境に優しい建物は社会的に評価が得られ、価値が向上する効果が期待できます。

これを機にZEB化について検討してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/06.html

*5
一般社団法人 木を活かす建築推進協議会
令和2年度 国土交通省補助事業 住宅省エネルギー技術 講習テキスト p23
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/r2text_standard.pdf

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