• 更新日:2023.03.10
  • 作成日:2023.01.17

照明選びのポイントは?快適オフィス実現のため知っておきたい光の影響とは

オフィスの照明を取り替えようとなった時に、どのような基準で新しい設備・機器を選ぶでしょうか。
光がどのような影響を及ぼすのかについて検討をしないと、照明選びの基準も定まらないかもしれません。

そこで今回は、光と照明への知識を深め、快適なオフィス作りに活かして頂くお話を展開してまいります。
ぜひ、参考にしてください。

照明の明るさを調節するオフィスが増えている

ビル内の設備は、長年使い続けていると経年劣化してくるものです。
「そろそろ老朽化してきたな」と感じたタイミングで、設備の入れ替えを検討する方も多いのではないでしょうか。
照明設備も、定期的なメンテナンスが必要な設備の一つです。

オフィスの照明というと、明るい方が書類などの字が見やすく、作業がやりやすくなると考える人が多いようです。
また、時間帯に関係なく同じ明るさで照らすというのが、一般的な考え方ではないでしょうか。

しかし、朝から晩まで同じ明るさで照らし続けるオフィスには弊害もあることが、最近になって分かってきました。*1

とりわけ問題になりやすいのが、夜遅くまで残業するような場合です。
外が暗くなっても、それとは関係なくオフィスの明るい光を浴び続けることになるため、日中と夜間での光環境にメリハリが無くなり、生活リズムが乱れやすくなります。

寝つきが悪くなるという症状が出てしまうと、日中の作業効率にも影響しかねません。

人間の体には「体内時計」と呼ばれる仕組みがあり、それによって一日約24時間のリズムを感じ取っています。
この約24時間周期のリズムは概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれており、人間においては、昼夜の変化に応じて体温やホルモン分泌などを積極的に変化させるということが知られています。
人間に限らず多くの生物には、地球上の昼夜の変化に応じて体内環境を積極的に変化させるという機能が備わっています。*2

体内時計を調整するのに必要となるのが太陽の光であり、太陽からの光を浴びることで季節による明暗周期の変化などに対応します。

このような体内時計の仕組みがあるため、強い光を浴び続けてしまうと、体が昼間だと勘違いしてしまうということが起ってしまいます。
その結果、夜遅い時間になっても眠気を感じにくくなり、寝つきが悪くなってしまうということが起るのです。

近年では、健康への影響や個人の明るさの好みにも配慮し、明るさを調節するというオフィスも増えてきています。

照明はオフィスでの仕事にどんな影響を及ぼすのか

照明は、空間の印象も左右します。

例えば、ホテルや飲食店といった場所では、落ち着いた雰囲気になるように、明るさを抑えた温かみのある照明が用いられています。
一方、スーパーや家電量販店、セミナールームといった場所では、活動的になれるように、明るい昼白色の光が用いられています。

オフィスにおける照明は、仕事にどれほど影響するものなのでしょうか。

それについては、照明が作業にどのように影響するのかを調べた実験があります。
実験では、単純作業の模擬作業として加算作業、校正作業、テキストタイピングを、商品開発など創造性が必要とされる業務の模擬作業として以下に示す数独、マインドマップ、ブレインライティングを照度(lx)や色温度(K)を変えて測定が行われました。

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引用)「照明計画と知的生産性に関する研究」、大成建設技術センター報第43号、P54-2

https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/paper/A043_054.pdf

本実験の結果は、意外なものでした。

まず、単純作業には照明の違いによる差は出ませんでした。
その原因としては、単純作業においては作業に没頭するため、光環境による影響を受けにくかったためと考えられています。

その一方で、創造的な業務を模した作業では、照明の条件によって作業効率に違いが見られました。

以下に示すのは、数独、マインドマップ、ブレインライティングの各照明条件における作業効率の結果です。

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引用)「照明計画と知的生産性に関する研究」、大成建設技術センター報第43号、P54-4~54-5

https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/paper/A043_054.pdf

この結果を見ると、数独では、照度が高くなると作業効率が向上するということが分かりました。

マインドマップでは、ケース間に有意な差は見られませんが、低色温度で作業効率が向上するという結果が出ています。

ブレインライティングにおいては、Case3(375 lx - 3000 K)よりもCase4(750 lx - 4000 K)の方が作業効率が有意に上昇しました。

この実験結果を見ても分かるように、オフィス内で商品企画といった知的な創造を必要とする仕事をする場合では、照明によって影響を受けると考えられます。

オフィスでどんな仕事をするのかによって、最適な照明というのは変わってきます。
生産性を高めるためにも、どんな照明が一番良いのかを意識しましょう。

照明で癒しの空間を実現するには

質の高い仕事をするためには、十分な休憩を取ることも重要です。
仕事から離れてリラックスできるように、休憩スペースを設けているというところも多いでしょう。
一般的にリラックスできる照明として用いられるのが、明るさを抑えた温かみのある電球色です。

休憩スペースにふさわしい照明も、具体的に見ていきましょう。
以下に示すのは、実験で用いた部屋の様子と測定結果です。
昼白色と電球色の照明について、それぞれインテリア性のあるものとないものを用意し、被験者が部屋に入った時の印象について「癒される」を7、「癒されない」を1として7段階に区分して評価を行いました。

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引用)「癒される照明の認知プロセスモデル」北星学園大学文学部北星論集第47巻第1号、後藤靖宏著、P3,5

https://hokusei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1587&item_no=1&page_id=13&block_id=21

この結果を見ると、昼白色よりも電球色の方が癒しの効果があるというのが分かります。

また、照明の色温度だけでなく、インテリア性の有無を見ると、インテリア性があった方が癒されるという結果が出ています。

このことからも、癒される空間にするためには、照明の色温度だけでなくインテリア性も重要な要素であると言えます。

照明というと、明かりを得るためのものというイメージが強く、インテリアとしても利用しようと考える人は、それほど多くはないのではないでしょうか。

休憩スペースで疲れを癒し、仕事に前向きに取り組めるようにするためにも、照明にこだわってみるのもいいかもしれません。

照明計画を考える際には、癒しの空間を実現できるようぜひご検討下さい。

最適な明るさとは

快適なオフィスにするためには、生活のリズムや目的に合った照明にすることが大切です。
目的や時間帯に合わせて照明の明るさを変化させることで、生産性を上げたり、働く人の健康に配慮したりといったことができるようになります。

オフィスの照明は、頻繁に取り替えるというものではなく、そこで働く人に大きな影響を及ぼす要素でもあります。
例えば、個人の好みの明るさに調節できるようにするのも一つのアイデアです。
快適な作業環境を実現するためには、作業する人が自分に合った明るさに調節できるのが望ましいでしょう。

明るさという点でとりわけ注意が必要なのが、光刺激に対して敏感な人への配慮です。
発達障害と呼ばれる人の中には、光刺激に対して特に敏感な人がいます。
蛍光灯の光がチカチカ見えたり、LEDの光が目に刺さるように見えたりといった、他の人とは違った見え方に悩む人も多くいます。*3

そのような悩みに対応できるよう、照明の種類や位置、明るさには調整可能な余地を残すことを含め配慮するのもよいでしょう。

照明設備について検討する際には、どうしても明るさや省エネ、ランニングコストのことばかりを考えがちです。

照明は、オフィスで働く人に対して影響を与える要素であるため、生産性や健康への影響もトータルに考えながら、最適な設備・機器を選ぶ必要があります。

快適なオフィス環境を実現するために、一度照明の使い方を検討してみてはいかがでしょうか。

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*1 「照明計画と知的生産性に関する研究」、大成建設技術センター報第43号、P54-1
https://www.taisei.co.jp/giken/report/2010_43/intro/C043_054.htm

*2 「体内時計|eヘルスネット」、厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-039.html

*3 「発達障害って何だろう 視覚が過敏「光」「色」がストレス」、NHK
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/hattatsu/torisetsu/cat_sight.html

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