照明にLEDを使用する家庭やオフィス・店舗が増えています。LEDの特徴は、従来の電球や蛍光灯に比べエネルギー消費量が少なく、二酸化炭素排出量も抑えられることです。
特にオフィスビルや店舗では、ビル全体のエネルギー消費量に対する照明のエネルギー消費量の割合が高いことがわかっています。
照明によるエネルギー消費を減らすために蛍光灯などの間引き点灯で対応するオフィスも多く見られますが、それでは課題が残ります。
そこで注目されているのがLEDベースライトです。
オフィスビルでの消費エネルギー量とLEDの節電効果
オフィスビルや店舗、商業施設では、照明によるエネルギー消費の割合が高くなっています(図1)。
図1 オフィスビル、店舗での消費エネルギー構成
(出所:省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー」「商業施設のエネルギー消費構造」をもとに三菱電機ビルソリューションズ 作成)
https://www.eccj.or.jp/office_bldg/ https://www.eccj.or.jp/commercial_bldg/s2.html照明で消費されるエネルギーは、オフィスビルでは全体の約21%、店舗や商業施設では約29%にのぼっており、照明設備を省エネ化することは節電対策として重要であることがわかります。
そして環境省によると、一般的な蛍光灯や電球をLEDに切り替えたとき、明るさはそのままで大きな省エネ効果があることもわかります(図2)。
図2 LEDへの切り替えによる省エネ率
(出所:「省エネしながらより快適に! 建物のエコ照明化」環境省)
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/akari/build/また、LED照明は寿命が長く、取り替えにかかるコストや手間も軽減できるという特徴があります。
温暖化や電気代の高騰が続く中、LED照明への切り替えは急務でもあるのです。
LEDベースライトとは
オフィスなどの天井に設置するLED照明をLEDベースライトと呼びます。
照明による電力消費を減らすために、天井の蛍光灯のうち一部だけを利用する「間引き点灯」を実施しているオフィスビルもよく見られますが、室内に明るさのムラが出てしまいます。また、間引き点灯を実施しても、LEDに切り替えて全面点灯するほうが消費電力は少なくて済むという特徴があります(図3)。
図3 間引き点灯とLED導入による明るさ分布と消費電力
(出所:三菱電機)
https://www.mitsubishielectric.co.jp/shoumei/setsuden/LEDベースライトは明るさを保ちつつ節電対策もできる方法といえます。
また、LEDベースライトには、いくつかの種類があります。
天井への直接設置
従来の蛍光灯はローゼットという取り付け用のユニットに蛍光管をはめこむ形で使用されますが、LEDベースライトは一般的に、天井に直接取り付けたり天井に埋め込んだりする形で施工されます。
天井に直接設置することにより、室内をまんべんなく照らすことができます。
既存設備を活用した設置
一方で、蛍光管の取り付け用にすでに設置されている器具をそのまま生かしてLEDに切り替える方法もあります。
導入時の初期費用を抑えることができるという特徴があります。
他には、形状別にライン型、スクエア型といった種類があります。また、デザイン性を重視した商品もあります。
LED照明と「水俣条約」
また、LED照明はもうひとつの環境対策としても注目されています。
2013年に熊本市および水俣市で開催されたUNEP(国連環境計画)で「水銀に関する水俣条約」が採択され、2017年に発効しました*1。
水銀は人体にも微量含まれていますが、高濃度の水銀は神経系疾患などの健康被害をもたらします。1950年代に広がった水俣病はその代表的な事例です。水銀に汚染された魚介類を食べた多くの人たちが深刻な健康被害を受けました。
土地名を冠した「水俣条約」は、水銀が人体や環境に与える悪影響を減らすことが目標です。おもに下記のような内容が含まれています*2。
•水銀鉱山からの一次産出、水銀の輸出入、小規模金採掘等を規制
•水銀添加製品(蛍光管、体温計、血圧計等) の製造・輸出入、水銀を使用する製造工程(塩素アルカリ工業等)を規制(年限を決めて廃止等)
•大気・水・土壌への排出について、利用可能な最良の技術/環境のための最良の慣行(BAT/BEP)等を基に排出削減対策を推進
•水銀廃棄物について既存条約(バーゼル条約)と整合性を取りつつ適正処分を推進
•途上国の能力開発、設備投資等を支援する資金メカニズム創設 |
条約の前文には水俣病の教訓についても記されています。
照明器具と水銀
この条約を受けて、照明器具メーカーは蛍光ランプへの水銀の封入量を減らす工夫を続け、実際に蛍光ランプの水銀封入量は大幅に減っています(図4)。
図4 蛍光ランプへの水銀封入量の推移
(出所:「照明に関する水俣条約への正しい理解について」日本照明工業会)
https://www.jlma.or.jp/kankyo/suigin/docs/2018LedNextstageMinamata.pdf p18そして、LED照明の切り替えも水銀の使用を減らす主要な手段になっています。LED照明には、水銀が使用されていないためです(図5)。
図5 電球、蛍光ランプ、LED照明のしくみ
(出所:「照明に関する水俣条約への正しい理解について」日本照明工業会)
https://www.jlma.or.jp/kankyo/suigin/docs/2018LedNextstageMinamata.pdf p20LEDへの切り替えは、産業での水銀使用を減らすという点でも意味を持つのです。
LED化に関する注意点
節電、環境保護の両面から導入が進むLED照明ですが、取り付けには注意が必要です。
ベースライトで使用されている直管蛍光灯をLED照明に交換する際には、原則として電気工事が必要です。
そのまま取り替えられる蛍光灯型のLED照明もありますが、適合しない器具に取り付けるなどの誤った使用によって火災などの事故につながるほか、LEDの最大の特徴である電力効率が損なわれてしまうこともあります。
また、同じ部屋にLEDと従来の蛍光灯を混在させることも危険です。
現在のままの器具でLEDに切り替えることができる場合とそうでない場合があります。よってLEDの導入にあたっては、メーカーなどに相談の上で取り替えるようにしましょう。
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「照明に関する水俣条約への正しい理解について」日本照明工業会
https://www.jlma.or.jp/kankyo/suigin/docs/2018LedNextstageMinamata.pdf p7-8