• 更新日:2024.05.20
  • 作成日:2022.11.02

温度管理だけが空調ではない|多機能に進化したビル管理システム

日本は縦に長い島国で、私たちは春夏秋冬、様々な気候の中で暮らしています。冬場は厳しい寒さが訪れ、近年の夏場は猛暑日が続き、熱中症への注意喚起が毎日のように行われるようになりました。

そんな現代の生活において、空調はなくてはならない機能です。

最も身近な空調といえば、一般家庭にも設置されているエアコンでしょう。
家庭用のエアコンも、湿度管理や換気など様々な機能が搭載されています。

一方で、家庭より多くの人が集まるビルでは、より多くの機能が求められています。私達が快適に仕事やショッピングを行っている裏で、様々な方法でビル管理が行われているのです。

今回は、空調に代表されるビル管理の最前線をお伝えします。

空調とは

空調とは、「対象とする空間の空気の温度・湿度・流量・清浄度等を調節すること」です。*1

一般家庭と違い、ビルは建物の容積も大きく、さらに、気密性が高く設計されている事が多いため、利用者は自分の意志で環境を整えることができません。*2

特に、夏場の温度上昇は命にかかわることもあります。

そのため、空調で室内の環境を整えることが重要になるのです。

日本の夏は気温に加えて湿度が高く、世界的に見ても過ごしにくい気候に分類されます(図1)。

さらに近年は、夏場に35℃以上の猛暑日を記録することも珍しくありません。厚生労働省の発表では、1995年と2020年を比較すると熱中症による死亡者数は約5倍に増えています。*3

一方で冬場は、湿度が低く乾燥ぎみでフランス・パリと同じくらいの寒さです(図1)。

図1 乾球と湿球、2つの温度で見る世界の気候

出所)引用元「日本の夏、もはや「エアコンなし」がダメな理由」日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO02419670X10C16A5000000/

一年を通して暑さ寒さが一貫していれば、環境に対応した建物づくりが可能ですが、寒暖差の激しい日本ではなかなかできることではありません。

そこで、私達の健康や快適な生活を守るために必要不可欠なものが、空調設備なのです。

温度管理だけではない進化したビル管理システム

ビルの中で快適に過ごすために管理が必要な項目といえば、多くの人が思いつくのは温度や湿度の管理、つまり空調でしょう。

しかし、今やビル空調に求められるのは温度や湿度の管理だけではありません。

省エネや遠隔監視、エネルギー消費の見える化など様々な機能が求められており、空調を含めた「ビル管理システム」として進化を遂げています。

ここでは、三菱電機ビルソリューションズの「BuilUnity(ビルユニティー)」と「facima(ファシーマ)」を例に、最新のビル管理システムの機能を紹介します。

BuilUnity(ビルユニティー)

BuilUnityは、空調、照明、換気などの設備を1台のコントローラーで一括管理し、1台のパソコンで設備の監視・制御を行うことができるシステムです。様々な機能を使って省力化・省人化、省エネを実現できます。*4

ユーザーに合わせたビル運用

三菱製の空調・照明とBuilUnityを接続すれば複数の設備を連携制御でき、省エネも実現できます。

例えば、以下のような設備管理が可能です。

・人流センサーを用いて部屋の中の人数を把握し、換気量を自動で制御します(図2)。

無駄な換気を減らすことで省エネに繋がります。

図2 換気量制御の仕組み

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P13

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P13

・照明に付属しているセンサーで部屋の中の人数や、在不在を把握し、空調の温度や照明の明るさを自動で調整します(図3)。

 スケジュール制御も可能で、業務時間に合わせて空調や照明を制御することも可能です。

 職場でありがちな失敗である空調や照明の消し忘れ防止にも繋がります。

図3 人の在不在情報と空調・照明の連動制御(ゾーニング制御)

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P14

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P14

自席エリアを最適な空調・照明に個別設定できます。

複数の人が在席する職場では、空調の温度設定がしばしば問題になります。

しかし、BuilUnityを使えば、個人の好みに合わせた温度設定や照度設定が可能です(図4)。

図4 個人ごとに最適な空調・温度の個別制御

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P14

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P14

メーカーを問わずシステム連携

設備制御・監視、入退管理、映像監視といった他の管理システムとも連携可能です。

メーカーを問わず連携できるので、既存設備を変更せず有効に活用できます。

スマホからでもビルの状態を確認・制御

スマートフォンやタブレットを使って、複数のビルの状態を確認・制御できます(図5)。

異常発生時にはメールで通知を受け取ることができ、外出先から空調の制御変更も可能です。

図5 デバイスからの確認イメージ

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P17

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P17

エネルギー収支や使用状況を見える化

BuilUnityを使えば、どのような設備がよく使われているのか、どの程度エネルギーが消費されているのか、設備異常発生の有無などを確認することができます(図6)。

各設備の使用状況を目で見て確認できるため、適切な設備運用が可能になります。

図6 収集したデータを見える化

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P11

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P11

facima(ファシーマ)

ビルの設備を一元的に効率よく運用できるシステムです。BuilUnityと同様、設備のスケジュール制御、システムの連携などが可能ですが、他にも以下のような機能があります。*4

電力デマンドの監視・制御

電力デマンドとは瞬時電力値(kW)を意味します。

facimaは電力デマンドを予測し、許容値を超える場合は警報を発令します。

また、電力の使用状況の「見える化」を行うとともに、目標電力量を超過しないように設備を制御することが可能です(図7)。

さらに、停電時や復電時の設備運転も制御でき、不測の事態にも対応することができます。

図7 facimaで行う電力監視と制御

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P33

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P33

ビルマネージメントシステム(BEMS)

ビル全体やテナント単位でエネルギー管理や課金が可能です。

ビル内の設備が消費したエネルギーデータを収集・集計してグラフ化することができます(図8)。どこでどれだけのエネルギーが使われているかをビル管理者が把握することで、必要な設備、不要な設備がわかりスムーズな設備改善が可能です。

電気以外にも、水道・ガスなど使用量や運転時間を自動で収集し、請求額を算出、空調や照明などの稼働状況を管理して、ビルの保全計画を立てる事もできます。

テナントへの請求書まで作成・発行できるので、ビル運営の効率が大幅にアップします。

図8 facimaで行う電力監視と制御

出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P29

https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf P29

快適な環境の裏にはきめ細やかな制御あり

これまでは空調は空調、照明は照明と独立して稼働することが多く、その運転管理の方法は、ほとんどが手動でした。

手動で管理を行うと、どうしても空調や照明の消し忘れといったヒューマンエラーが発生してしまいます。

また、室内の居心地を大きく左右する要素の一つは温度ですが、個人によって心地よいと感じる温度は異なります。

家と同様に長い時間を過ごす職場では、温度は快適性を左右する非常に重要なファクターです。

職場のクーラーが効きすぎて寒い、クーラーの温度設定が高すぎて暑いという話はよく耳にする困りごとです。

その他にも、ビル運営をする上で重要になるのが電力制御です。

電力を使いすぎてしまうと、最悪の場合、空調や照明が停止してしまう可能性があります。

この制御を手動で行うのは非常に煩雑ですし、作業者の心理的負担も大きくなってしまいます。

しかし、今回ご紹介したようなビル管理システムでは、煩わしい空調や照明のON・OFF作業や施設全体の使用電力を自動で監視・管理をしてくれます。

さらには、在室人数を把握して空調や照明を調整することや、自席の温度を個々人で設定することも可能です。

このような一括管理を行えば、様々な制御パラメーターを最適に調節してくれるため、省エネという観点から見ても非常に有効です。

これまで私達が快適にビルの中でショッピングを楽しめたのも、環境が整った職場で仕事ができたのも、空調や照明、電力を管理してくれる人がいたから。

しかし、今やその仕事の殆どはビル管理システムが代行してくれます。

快適な空間が維持されている裏では、ビル管理システムがきめ細やかな制御を行い、黙々と環境をコントロールしてくれているからなのです。

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*1
出所)経済産業省「空調機器について」P1
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/kagaku_busshitsu/flon_taisaku/pdf/002_01_00.pdf

*2
出所)大阪市環境保健局 環境衛生課 奥田修「ビル管理法の概要」P148
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/19/5/19_5_148/_pdf/-char/ja

*3
出所)厚生労働省「年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和2年)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho20/dl/nenrei.pdf

*4
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱ビルマネジメント総合カタログ」P11-15,P17,P27-31,P33,P43
https://www.mitsubishielectric.co.jp/building/catalog/pdf/c-00985-a-ip.pdf

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