• 更新日:2023.02.28
  • 作成日:2022.11.02

データで都市を動かす 「スマートシティ」がもたらす未来の生活とは?

時代と共に、わたしたちの生活の利便性は向上しています。
しかし一方で、都市部の自動車渋滞、それによる温室効果ガスの発生や、逆に山間部の過疎地域では交通インフラが衰退するなどの新たな社会問題を抱えるようにもなっています。

そこで近年、注目が集まっているのが「スマートシティ」です。

わたしたちの生活の中で生じる「データ」をもとに、インフラや医療、防災など様々な分野の課題を解決し、同時に利便性も向上させていこうとするこの試みは、国内外で実証実験が進められています。

スマートシティとはどのようなものなのか、みていきましょう。

人々の生活は「データ」が溢れている

わたしたちは生活の中で、移動したり買い物をしたり、時には病院に通ったりします。

それらの行動や使ったお金の額、健康に関する数値などはすべて「データ」と呼べます。また、何時ごろどこからどこまで出勤することが多いか、自宅でどのくらいエネルギーを消費しているのか、といったこともデータです。

どの地域に子どもや高齢者が多いか、地域による災害の起きやすさはどのくらいか…

わたしたちの日常はデータに溢れているともいえます。

そこで、こうしたデータに基づいてIoTやAIを駆使し、交通網やエネルギー、医療体制などの管理を最適化しようというのが「スマートシティ」構想です(図1)。

図1 スマートシティの概念

(出所:「スマートシティガイドブック」内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/01_scguide_1.pdf P11

これにより、生活上の利便性が向上するだけでなく、無駄なエネルギー消費を防ぐといった環境対策、防災、物流やインフラの適切な維持管理などのメリットが生まれます。

スマートシティがもたらす課題解決

地域がスマートシティ化していくことのメリットを、分野別にいくつか見ていきましょう。

まず、交通・モビリティに関しては以下のようなことが可能になると考えられます(図2)。

図2 交通・モビリティ部門へのメリット

(出所:「スマートシティを通じて導入される主なサービス」内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/02_ref1.scservice_1.pdf p2

現在、都市部や観光地では乗用車が集中し渋滞が起きるという問題が生じています。一方で過疎地では乗客が少ない公共交通機関は経営が維持できず、路線廃止に追い込まれる例も少なくありません。

そこで、位置情報データを利用して混雑緩和をはかる、過疎地では効率的な運行ダイヤを組むことによって合理的な経営ができるようにする、といったことが考えられます。

交通・モビリティへの導入事例

例えば川崎市では、鉄道やバス、タクシーなどの交通手段を検索できるアプリを開発し、手配も可能にしています。さらに電車のリアルタイム運行情報や混雑情報を発信することで、公共交通機関の利便性を高めています*1。

また、茨城県境町では、日本ではじめて自動運転バスを定常運行させています*2。

将来的に運転手が不足しても、地域に住む人の移動手段が維持されるというメリットがあります。

防災面でのメリット

そして、防災分野では下のようなメリットが考えられます(図3)。

図3 防災分野でのメリット


(出所:「スマートシティを通じて導入される主なサービス」内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/02_ref1.scservice_1.pdf  p6

まず、地形や気象情報のデータを活用することで災害のシミュレーションを適切に実施することができます。

そして発災時には、災害のリアルタイム情報を住民に提供することで、より適切な避難に繋げることができるというわけです。同時に死傷者のデータを共有し、必要な場所に必要な医療を届けることもできることでしょう。

過去の大災害をみると、多くの人がスマートフォンを情報収集の大きなツールにしています。また、被災地では必要物資が適切な量で届けられず、ものによっては余ったり不足したり、需要に見合わない状況も散見されています。

こうした混乱を回避するためにも、リアルタイムデータの活用は重要なことでしょう。

防災へのデータ活用の事例

実際に、都心の一部地域(大丸有地区=大手町、丸の内、有楽町地区)で導入されているのは被害状況だけではありません。

人の移動や滞留といったリアルタイムデータを収集して可視化し、地域にいる人のスマートフォンに避難情報をプッシュ通知しています*3。

人の多く集まるオフィス街では、避難時の人の移動もまた大混雑します。バス停やタクシー乗り場に長蛇の列ができている様子を目にしたことがある人は多いことでしょう。このような事態を少しでも避けるための技術です。

また、会津若松市では除雪車の位置情報をリアルタイム発信するというシステムもあります*4。


インフラの最適な維持管理にも

インフラを適切な時期に、適切な予算で維持管理することも可能になるでしょう(図4)。

図4 インフラ維持管理面でのメリット

(出所:「スマートシティを通じて導入される主なサービス」内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/02_ref1.scservice_1.pdf p8

道路や河川施設、建築物などは日常的な管理、定期的な補修を必要としますが、やみくもな維持管理では適切かつ合理的かはわかりにくいものです。

そこで、例えば走行する車にセンサーをつけて道路状況のリアルタイムデータを取っておき、必要なときに必要な場所の補修工事を実施する、といったことも将来的には可能になるでしょう。インフラ管理のコストダウンにもつながります。

また、人やモノの移動をデータ化できれば、必要なところに必要なサービス施設などを作ることも可能です。

持続可能なまちづくりにも

ここまで、スマートシティが可能にする未来の地域像をいくつか紹介してきました。

それぞれの分野でのスマートシティ化は分野ごとの課題を解決し、より便利な生活をもたらすだけではなく、地域の「持続可能性」も同時に目指しています。

ここまで挙げた事例では、都市部だけでなく過疎地域の生活の足を維持し続けること、災害に強い地域を作ること、重要インフラの維持管理を低コストで続けていくこと、これらはすべて持続可能性につながるのです。

また、エネルギーに関していえば、各地で消費されるエネルギーの種類などを分析し、必要な場所に必要な形(電気、水素、バイオマス等)でのエネルギー供給を実現し、無駄のないエネルギー計画が可能になるでしょう。

データの利活用は、新しい社会を切り拓くために必須の手段なのです。

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「スマートシティを通じて導入される主なサービス」内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/02_ref1.scservice_1.pdf p3

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https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/02_ref1.scservice_1.pdf p7

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