• 更新日:2023.02.28
  • 作成日:2022.10.19

発祥は紀元前? エレベーター・エスカレーターの歴史と未来

今ではあちこちで当たり前のように見かけるエレベーターやエスカレーターですが、その発祥はなんと紀元前3世紀にまで遡ります。

エレベーターやエスカレーターがどのように発明され現在の形になっていったのか、そして未来にはどんなエレベーターやエスカレーターが誕生するのか、ここで少し覗いてみましょう。

エレベーターの起源は古代ローマ!?

エレベーターの原理を最もシンプルに言えば、「滑車とロープを使って荷物(人)の上げ下ろしをする」ことです。

その意味では、エレベーターの原理の発見は紀元前、古代ローマ時代に遡るといいます。
浮力や円周率で有名なアルキメデスによって紀元前236年に考えられ、動力は人力、用途も荷物用でした*1。

そこから長い時間を経て、人力によらないエレベーターがつくられたのは1835年のことです。
1769年にジェームス・ワットによって蒸気機関が発明され、1835年、ついにエレベーターの動力としても導入されることになります*2。
しかしこの段階ではまだ、ロープが切れたり外れたりすることもある、危険の残る道具であったことも事実です。

その後、1852年にロープが切れても落下しない安全装置が発明され、ようやく人を乗せることのできるエレベーターが登場します*3。1854年のことです。
そして1870年には、ニューヨークのデパートで世界初の人が乗ることができる商業用エレベーターが登場します(図1)。

図1 ニューヨークで導入された乗用エレベーター

(出所:「わが国の最古級エレベーター巻上機」国立科学博物館)

https://www.kahaku.go.jp/research/publication/sci_engineer/download/30/BNSM_E3003.pdf p28

このエレベーターには、「運転手」が存在します。
「ロープコントロール方式」という仕組みで動いているエレベーターで、操作レバー、あるいはプーリという滑車に取り付けられた麻ロープがかごの中を貫通しています。
そして運転時はこのロープをどちらかに強く引くことで制御器を動かし、運転と停止を行うというものでした。油圧式エンジンが使われています。

上の図1では、左に立っている運転手が両手で握っているのがコントロールロープです。その端の部分は機械室の制御器に取り付けられており、このロープを上下に引くことでエレベーターのかごを運転・停止させていました。

そして、「カウンターウエイト方式」というシステムが搭載された近代エレベーターが登場したのが1903年のことです。

カウンターウエイト方式とは、井戸のつるべと同じ原理で、エレベーターのかごとロープで結ばれた反対側におもりを吊るすことで、かごを効率よく昇降させるものです(図2)。

図2 カウンターウエイト方式のエレベーター

(出所:「エレベーターの歴史・変遷」日本エレベーター協会)

https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/history/elevator.html

カウンターウエイト方式の導入による効率性向上で、エレベーターは高層ビルにも設置されるようになりました。

日本最古のエレベーターはどこにつくられた?

では、日本ではいつ、どこで最初のエレベーターが導入されたのでしょうか。

日本では、1890(明治23)年に、上野浅草の「凌雲閣(りょううんかく)」に設置されたものが最初であるとされています(図3)。

図3 日本初のエレベーターが設置された凌雲閣

(出所:「わが国の最古級エレベーター巻上機」国立科学博物館)

https://www.kahaku.go.jp/research/publication/sci_engineer/download/30/BNSM_E3003.pdf p24

凌雲閣は歴史的建造物でしたが、その後関東大震災で大きな被害を受け解体されました。
なお、凌雲閣の開館日である11月10日は、日本では「エレベーターの日」となっています。

デザインも多様化していきます。例えば1933年には「モダニズム」を取り入れたエレベーターが設置されたこともありました(図4)。

図4 1933年に日本橋高島屋に設置されたエレベーター

(出所:「エレベーターの歴史・変遷」日本エレベーター協会)

https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/history/elevator.html

そして池袋サンシャイン60に設置された分速600mのエレベーターが世界最速のエレベーターとして、1978年にギネスブックに掲載されたという歴史もあります*4。
その後、エレベーターは速度の面でも進歩を続けています。

エスカレーターの歴史

さて、エレベーターに比べ、エスカレーターは比較的近年の乗り物と言えます。
日本エレベーター協会によると、エスカレーターの誕生は1892年、ジョージ・H・ウイラーが動力で動くハンドレール(移動手すり)を考え出しましたことから始まります*5。
また、同年にジェン・W・レノが「傾斜形エスカレーター」の特許を取得しています。

そして日本で最初にエスカレーターが設置されたのは東京・日本橋の三越呉服店(いまの三越百貨店)です(図5)

図5 三越呉服店に設置されたエスカレーター

(出所:「エレベーターの歴史 歴史」日本エレベーター協会)

https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/history/escalator.html

ただ、こちらも1923年、関東大震災によって焼失してしまいました。

IoT・AIの時代、未来のエレベーターはどうなる?

さて、現代、ビルではロボットも働く時代になりました。

AIの導入も進む中、2020年に東京・竹芝に登場した「東京ポートシティ竹芝」のエレベーターでは、顔認証によって乗るエレベーターを自動で指定するシステムや、AIで人の流れを予測してエレベーターを適切に配置する仕組みが導入されています*6。

また、BCPの観点から、電気自動車や太陽光発電といった外部の電源や発電装置と連携し、エレベーターの定速運転を維持するという方式もとられています。

エレベーターやエスカレーターは、いまやわたしたちの生活に欠かせないものとなっています。
そして今後は利便性だけではなく、より高い安全性・省エネ性も求められていきます。

これからも多様な技術の発展によって、さまざまな機能をそなえたエレベーターやエスカレーターが登場することでしょう。

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https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/history/elevator.html

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「エスカレーターの歴史」日本エレベーター協会
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*6
「最新エレベーターの多彩な連携機能は未来の社会像を見せてくれるのか?」三菱電機BizTimeline
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