マンションや商業施設、空港など、様々な場所でエレベーターやエスカレーターは使用されています。乗り物の代名詞・車よりも利用する機会が多い人もいるでしょう。
私達の生活に密着したエレベーターやエスカレーターは、便利で快適かつ安全な乗り物です。
しかし、正しい乗り方ができていないと、事故につながってしまいます。
では、どのような行動が事故につながるのでしょうか。
また、事故に遭遇してしまった場合の対処法を見ていきましょう。
事故につながる行動と対処法
本来、エレベーターやエスカレーターは非常に安全な乗り物です。
しかし、間違った方法で利用してしまうと、事故が発生してしまいます。
ここでは、事故につながる行動とその対処法を紹介します。
エレベーター
日常生活で何気なく利用しているエレベーターも、注意を怠ると大きな事故につながります。
駆け込み乗車
電車と同じく、ドアが閉まりかけているところに急いで駆け込むことは非常に危険です。
閉まりかけたドアにぶつかる、ドアに挟まれる、転倒する、他の利用者に衝突する可能性があります。(図1)*1
図1: 駆け込み乗車
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターのご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/elevator.html挟み込み
衣類や買い物袋などがドアに挟まれる可能性もありますが、ひも状のものは特に注意が必要です。
マフラー、なわとび、イヤフォンのコードなど、ひも状のものは、ドアに挟まれたままエレベーターが動くと、思いもかけない大きな事故が起きる可能性があります。
他にもペットのリードにも注意しましょう。ペットだけがエレベーターの中に入る、もしくはペットだけがエレベーターから出てしまった場合、ペットの命に関わります。(図2)*1
図2: 挟み込み
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターのご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/elevator.html事故に遭遇したら
ドアにものが挟まった場合は、すぐに戸開ボタンを押し、挟まったものを取り除きましょう。*1
エスカレーター
エスカレーターは多くの人が同時に利用するため、一度事故が起こると被害が大きくなる可能性があります。
ベビーカー、カート、車いす、台車などを乗せる
エスカレーターにベビーカー、カート、車いす、台車などを乗せると、転落・転倒の危険があります。
特にベビーカーは、乗せている赤ちゃんを危険に晒すことになりますし、空のベビーカーやカートなどであっても、転落・転倒すれば他の乗客が怪我をする可能性もあります。(図3)*2
図3: ベビーカーの乗り入れ
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エスカレーターのご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/escalator.html?tab=1挟まれ・巻き込まれ
ピンヒールや傘の先など細いものは、エスカレーターのステップの溝に挟まれやすいので注意しましょう。(図4)*2
図4: ピンヒールの挟まれ
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エスカレーターのご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/escalator.html?tab=1エスカレーターはその構造上、隙間が発生してしまいます。
その隙間に巻き込まれやすいものは、くつ、長ぐつ、 樹脂製サンダル、ロングスカートや着物、丈の長い衣類などです。中でも特に多いのが 樹脂製サンダルの巻き込まれです。*3
樹脂製サンダルは「滑りにくい」、「柔らかい」、「伸びやすい」という特徴を持っており、この性質が巻き込まれやすさに繋がります。
実際に巻き込まれ事故にあった子供が着用していたサンダルの写真を見ると、巻き込まれ事故がいかに危険であるかがわかります。(図5)*3
図5: 子供が足にケガを負った事故時に着用していた樹脂製サンダル
出所)独立行政法人製品評価技術基盤機構「サンダルのエスカレーター巻き込まれ事故に関する 調査結果報告書」 p.4, p.5
https://www.nite.go.jp/data/000004576.pdf挟まれ・巻き込まれを防止するために、黄色の線の内側に乗りましょう。
また、ピンヒールや傘など細いものを身に着けているときは、注意をして乗ることが必要です。
立ち止まり
乗降口付近で立ち止まると、他の利用者の邪魔になるだけではなく、転倒事故につながる可能性があります。
エスカレーターから降りたら速やかに移動しましょう。(図6)*2
図6: 立ち止まり
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エスカレーターのご利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/escalator.html?tab=1歩行
日常生活でよく見られる行為ではありますが、ステップの上を歩いたり走ったりすると、転倒・他の利用者との接触が発生し、大きな事故につながりかねません。
一般社団法人 日本エレベーター協会や、鉄道事業者などでは、エスカレーターの歩行禁止を呼びかけています。(図7)*2
図7: エスカレーターの安全利用を呼びかけるポスター
出所)西日本旅客鉄道株式会社「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろう』キャンペーンの実施について」
https://www.westjr.co.jp/press/article/2014/07/page_5920.html事故に遭遇したら
もし、上記の事故に遭遇した場合は、必要に応じて非常停止ボタンを利用します。その場合、他の利用者に緊急停止することを伝え、手すりにつかまるよう指示してから非常停止ボタンを押しましょう。
他の利用者への声掛けが必要である理由は、急にエスカレーターが止まると、バランスを崩し転倒・転落などの二次被害が発生する可能性があるためです。*4
非常停止ボタンはエスカレーターの乗り口付近に設置されています。(図8)
図8: エスカレーターの部品名称
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱エスカレーター 三菱トラベーター(動く歩道)取扱説明書・運行管理編」p.44
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/manual/pdf/manual_web-c-00988-a_20220401.pdfもしもの時のために、エスカレーターに乗る際はボタンの位置を確認しておくと良いでしょう。
安全に関する機能
エレベーターやエスカレーターには私達が安心して使えるよう、様々な安全機能が備わっています。
それぞれの安全機能にどんなものがあるのか見ていきましょう。
エレベーター
故障・事故などを未然に防ぎ、緊急時や地震発生時にも利用者の安全を守る機能が備わっています。
ドアの開閉
エレベーターには、人が乗る「カゴ」部分に取り付けられた扉と、各階の乗り場に取り付けられた扉の2つがあります。この2つの扉が閉まらないとカゴは動きません。
また、乗り場側の扉は、エレベーターのカゴが到着しないと開かない仕様になっており、転落事故を防いでいます。*5
速度や位置の監視と制御
エレベーターの昇降速度は常に監視されており、規定の速度より早くなった場合はブレーキや非常止め装置が作動します。
また、最上階と最下階には「行き過ぎ検知システム」が設置されており、カゴが天井面または床面に衝突することを防いでいます。*5
非常止め装置
万が一ロープが切れた場合でも、非常止め装置が働いてカゴの降下を自動的に停止させます。*5
衝撃緩衝器
通常、ブレーキや非常止め装置が働くためカゴが落下することはありませんが、ブレーキや非常止め装置が故障した時のために「衝撃緩衝器」が設置されています。
天井面または床面にカゴが衝突したとしても、衝撃を和らげる事ができます。*5
乗り過ぎ(重量超過)検知
予め決められた重量をオーバーすると、ブザーやアナウンスで注意喚起が行われます。*5
地震発生時にも活躍する安全機能
上記の安全機能は、地震発生時にも私達を守ってくれますし、それ以外にも以下のような機能が働きます。*5
1.地震が発生すると自動的に最寄階に停止して扉を開放し、利用者を避難させる。
2.一定時間が経過すると、自動的に扉が閉まり外側からは開かなくなる。
3.揺れが軽微であれば通常運転に戻り、大きな揺れであれば点検を受けるまで復帰しない。
もし、エレベーターの利用中に地震が発生した場合は、行先階のボタンをすべて押しましょう。万が一閉じ込められても、インターホンで外部と連絡が可能です。慌てずに救助を待ちましょう。
地震発生時にはエレベーターを使って避難してはいけません。エレベーターに閉じ込められる可能性があります。
エスカレーター
エスカレーターもエレベーター同様、安全機能が備わっています。
自動停止
停電が発生した場合、動力の停止と共にブレーキが掛かります。
その他、ステップとステップガードの間に衣類や靴が挟まった場合、ハンドレール(移動手すり)の入り込み部分に物が挟まった場合にも自動停止し、乗客の安全を確保します。*6
非常停止
前述の通り、エスカレーターの乗り口付近には、非常停止ボタンが設置されています。
転倒・転落事故が発生した場合でも、手動でエスカレーターの運転を停止することができます。*6
事故を未然に防ぐために正しい乗り方を
「このくらいなら大丈夫だろう」と軽い気持ちで取った行動が、重大な事故につながる可能性もあります。
事故を防ぐために最も大切なことは、正しい乗り方で昇降機を利用することです。
正しい乗り方で利用していれば、事故に遭遇することはまずありません。
万が一、事故に遭遇してしまった場合には、今回紹介した対処法を思い出してください。
なお、三菱電機ビルソリューションズのYou Tube公式チャンネルでも、エスカレーターやエレベーターの安全な乗り方を紙芝居形式で配信しています。
楽しみながらエレベーター・エスカレーターの正しい乗り方を学ぶことができますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCv78hygjwQ-MLqTriKQ32gA
- MAIL MAGAZINE
-
ビルに関わるすべての方に!ちょっと役に立つ情報を配信中
メール登録
参照・引用を見る
*1
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターのご利用について 」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/elevator.html
*2
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エスカレーターのご利用について 」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/escalator.html?tab=1
*3
出所)独立行政法人製品評価技術基盤機構「サンダルのエスカレーター巻き込まれ事故に関する 調査結果報告書」2008 p.4, p.5, p.33
https://www.nite.go.jp/data/000004576.pdf
*4
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社「三菱エスカレーター 三菱トラベーター(動く歩道)取扱説明書・運行管理編」2022p.35
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/manual/pdf/manual_web-c-00988-a_20220401.pdf
*5
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターの安全対策」
https://www.n-elekyo.or.jp/safety/elevator.html?tab=1
*6
出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エスカレーターの安全対策」
https://www.n-elekyo.or.jp/safety/escalator.html#