• 更新日:2023.05.30
  • 作成日:2023.03.03

新しいオフィスの在り方とは?トレンドと実際のオフィスを紹介

新型コロナウイルスの影響によりテレワークが浸透し、働き方が多様化しています。それに伴い、従来のオフィスほどの広さが必要なくなり、シェアオフィスなどの新しいオフィスが台頭してきました。
新しいオフィスにはどのような形があるのでしょうか。また、どのようなメリットを得られるのでしょうか。

この記事では新しいオフィスの形から、実際に誕生した新しいオフィスの形態を紹介します。

オフィスを移転するメリット

2022年8月における東京都のテレワーク実施率は58.6%(従業員30人以上の企業)となりました*1。
半数以上の企業がテレワークを実施し、いかに浸透しているかがうかがえます。テレワークの実施により、企業によってはオフィスの空間が余っていることが考えられます。
そのような状況でオフィスを移転することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

固定費の削減

オフィスを縮小移転することで、固定費である賃料を削減することが可能です。
賃貸で東京に本社を構える上場企業の63%が、賃料を「高い」または「やや高い」と感じています*2。

external_image


出所)国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.27

https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

実際に都内の本社事業所の見直し(移転または縮小)を検討している企業は26%であり*3、具体的に検討している企業の69%が「賃料の安さ」を求める条件に挙げています*4。

就労環境の改善・業務効率化

具体的に移転を考えている都内に本社を構える企業のうち、55%が就労環境の改善、38%が業務効率化を移転のメリットであると考えています*5。
就労環境に関しては、賃料削減を超える、もっとも期待されているメリットです。

移転先に求める条件として、社員の居住環境を挙げる企業の割合は37%です。さらに、自社他拠点へのアクセスや交通の利便性など、移動に関する業務効率化を40%前後の企業が望んでいます*6。

検討される移転先は73%が東京23区であるため、交通の便から考えても23区内が候補として有力です*7。
後述するコワーキングスペースの、全国都市別施設数で見ても東京23区が2位の大阪市と4倍以上も差をつけていることから、需要の強さがうかがえます*8。

external_image

出所)大都市政策研究機構 日本のコワーキングスペースの現状と展開p.3

https://imp.or.jp/wp-content/uploads/2020/05/report-coworking-space-2.pdf

自然災害に備えたリスク低減・分散

自然災害に備えたオフィス移転も、期待されているメリットの一つです。
移転を検討している企業の28%が期待しています*9。

これは地震などの災害が発生したときに、バックアップ拠点としての役割として考えられています。すでにバックアップ拠点を整備している企業は31%あり、従業員が1,001人以上いる企業では半数以上が整備済と、規模が大きくなるほど完了していることが分かりました*10。

external_image


出所)国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.34

https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

内閣府が定めている「事業継続ガイドライン」にも代替拠点での業務分散が例示されています*11。

新しいオフィスの種類

それでは、近年の多様な働き方の台頭に伴いどのようなオフィスがトレンドとなっているのでしょうかについて、見ていきましょう。
近年はフレキシブルオフィスという、複数の企業や個人が共有する形で使用するオフィススペースの市場が拡大しています。
2026年度には2020年度の約3倍である2,300億円まで拡大する見込みです*12。

external_image

出所)PR TIMES フレキシブルオフィス市場2026年に2,300億円規模に 株式会社 日本能率協会総合研究所

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000035568.html

オフィスを移転するにあたり、参考となるフレキシブルオフィスの特徴やメリットを紹介します。

シェアオフィス・コワーキングスペース*13

フリーアドレス制の座席配置が主体のスペースです。法人や個人事業主、地域住民まで幅広く利用されています。場所によってはセミナーや交流イベントが開催されることもあり、他社との人脈形成や情報交換を行うことが可能です。カフェや保育施設などを併設しているところもあります。

この形態は、立地によって次の3つに分類されます。

・都心立地型:外出先など短時間で利用
・郊外立地型:住宅地に隣接し、長時間での利用
・遠隔立地型:本社から離れており、その地域に滞在しながら利用

料金体系は月額制が約80%を占めており、月額料金の中央値は12,000円です。

サテライトオフィス*14

サテライトオフィスとは、本社から離れた場所に構えるオフィスのことです。都市部に本社がある企業が地方にサテライトオフィスを設置したり、地方に本社がある企業が都市部に設置したりするケースなどさまざまです。

地方にあるサテライトオフィスの場合、従業員にとって通勤時間の削減やプライベートの時間確保、地元の活動を楽しむなどのメリットがあります。

総務省の通信動向調査によると、テレワーク導入企業におけるサテライトオフィスの使用率は15.2%となり、対前年の伸び率が50%と他と比べても勢いがある形態です*15。

external_image

出所)総務省 令和3年通信利用動向調査の結果p.5

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

サテライトオフィスには地方創生というメリットもあります。地方にオフィスを構えることで、都市部の人口集中を防ぐことや、地方での雇用創出といった効果が期待できます。

新しいオフィスの導入事例

最後に、新しいオフィス形態についてどのような施設があり、どのように活用されているのかについて、実例もみていきましょう。

オフィスとイベントスペースを備えるシェアオフィス「EGG JAPAN*16」

東京・丸の内にあるシェアオフィスとイベントスペースを備えた施設です*17。オフィスとしての機能はデスクや個室、会議室などを備えています。
また、ラウンジもあるため、来客への対応も可能です。丸の内アドレスによって安心感を与えるという効果もあります*18。

EGG JAPANでは交流スペースやイベント開催もできるため、他社とのつながりで新たなビジネスを生み出すことができます。

DX・イノベーション拠点としてのシェアオフィス「Shin Tokyo 4TH*19」

external_image

出所)三菱地所 新東京ビルに「Shin Tokyo 4TH」オープン

https://www.mec.co.jp/news/archives/mec200827_ShinTokyo4TH.pdf

東京駅直結のビルに2020年にオープンしたシェアオフィスです。このオフィスはDX化やイノベーションを促進している企業がメインに入居しています。
こちらもイベントスペースを備えており、企業が自らイベントや情報発信を行うことが可能です。イベントスペースが空いているときはワークスペースなどとして活用できます。

このオフィスの大きな特徴は、ラウンジやキッチンなどの区画間の廊下をあえて長くすることで、フロア内の交流や情報共有の時間を増やしていることです。これにより、さらなるイノベーションを期待しています。

コワーキングスペース付賃貸マンション*20

external_image

出所)三菱地所 第1弾「The Parkhabio SOHO 大手町」着工

https://www.mec-r.com/news/2020/2020_0824.pdf


1階にコワーキングスペースが併設されている賃貸マンションです。このマンションの居住者は24時間無料で利用することができます。在宅勤務ではオンとオフの切り替えができない、外のコワーキングスペースだと料金が発生するなどの課題を解決できる、新しいライフスタイルを提案するマンションです。

初期費用を抑えたいスタートアップ企業を支援する目的で、法人登記が可能となっています。

徳島県にサテライトオフィスを構える東京の企業*21

東京・恵比寿に本社を構える企業が2013年に徳島県神山町でサテライトオフィスを設立した例があります。

サテライトオフィスを設立した理由は、事業継続計画による災害時のリスク分散です。知人の紹介で訪れた地で、地元の雰囲気や企業に魅力を感じて神山町を選びました。実際に稼働してみると、不便なことは無く、社員がITツールを積極的に使うようになり、生産性向上につながったというメリットを感じるほどです。

このように、本社との距離が離れたからこそのメリットが生じるというケースもあります。

おためしサテライトオフィス*22

オフィスの移転を行うことにリスクを感じている場合は、総務省が提供しているおためしサテライトオフィスを活用することが効果的です。おためしサテライトオフィスとは、総務省が指定したIT設備が整っている地方のオフィスを、期間限定でサテライトオフィスとして利用できる制度です。

この制度を利用することで、実際に地方で働くことはできるのか、地方で雇用できる人はいるのかなどを事前に把握することができます。地域によっては、イベントやセミナーが開かれ、現地の人や企業と交流を図れる機会も用意されています。

多様な働き方を知り、それに適したオフィスを構えることが大切

テレワークの浸透により、さまざまな働き方が誕生しました。それに伴い、オフィスの形態を変える企業も出てきています。シェアオフィスなどに移転することで生産性の向上など、期待できるメリットは多くあります。

今後の企業としての働き方を改めて検討し、それに適したオフィスを構えることで、企業としても収益を上げ、従業員も満足度が高く働ける環境を整えていきましょう。

この記事の著者

田中 凌平

FP2級、AFP、証券外務員一種保持。
主に金融系の記事を執筆し、読者のマネーリテラシー向上に努める。
一般的な税金の知識から、経済ネタ、住宅関係など幅広く発信。

*1
東京都 報道発表資料 (1)テレワーク実施率
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/09/12/04.html

*2
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.27
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*3
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.21
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*4
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.25
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*5
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.24
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*6
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.25
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*7
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.24
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*8
大都市政策研究機構 日本のコワーキングスペースの現状と展開p.3
https://imp.or.jp/wp-content/uploads/2020/05/report-coworking-space-2.pdf

*9
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.24
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*10
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会 企業向けアンケート調査結果(速報)p.34
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

*11
内閣府 事業継続ガイドラインp.26
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline_exc202104.pdf

*12
PR TIMES フレキシブルオフィス市場2026年に2,300億円規模に 株式会社 日本能率協会総合研究所
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000035568.html

*13
国土交通省 テレワークセンター事例集p.2~6
https://www.mlit.go.jp/common/001267281.pdf

*14
総務省 サテライトオフィスの活用とワーケーション
https://www.soumu.go.jp/hakusho-kids/use/task/ict/ict_04.html

*15
総務省 令和3年通信利用動向調査の結果p.5
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

*16
三菱地所グループ 働き方を変える新しいオフィスづくりとは? 交流・イノベーション
https://newcityvisions.mec.co.jp/section-02/index.html

*17
EGG JAPAN
https://www.egg-japan.com/

*18
EGG JAPAN VOICES
https://www.egg-japan.com/voices/vol-21-appen-japan%e6%a0%aa%e5%bc%8f%e4%bc%9a%e7%a4%be-%e5%85%a5%e5%b1%85%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ae%e5%a3%b0

*19
三菱地所 新東京ビルに「Shin Tokyo 4TH」オープン
https://www.mec.co.jp/news/archives/mec200827_ShinTokyo4TH.pdf

*20
三菱地所 第1弾「The Parkhabio SOHO 大手町」着工
https://www.mec-r.com/news/2020/2020_0824.pdf

*21
総務省 働く場所を選べる、二地域就業の魅力サテライトオフィスが業務効率化のきっかけとなった
https://www.soumu.go.jp/satellite-office/case/case1/index.html

*22
総務省 おためしサテライトオフィス
https://www.soumu.go.jp/satellite-office/

RANKING

ランキング