日常に欠かせないものとなっているエレベーターとエスカレーター。設置される場所がさまざまであるからこそ、その用途に適した仕様になっています。ユーザーが使いやすい機能も開発され、便利な暮らしの手助けになっています。
オーナー目線でも、快適なエレベーターやエスカレーターの導入は建物の付加価値となるため、空室リスクや来店客数などに影響を及ぼす大切な設備です。機能によって維持費も変わります。
そこでこの記事では、各用途に適したエレベーターとエスカレーターの特徴を解説します。
ぜひ、設備選びの参考にしてください。
検討するべきエレベーターの機能
エレベーターといっても用途によって広さや速度、消費電力など違いは多岐に渡ります。ある程度の形が決まっているエレベーターから、用途別に適したデザインに特注も可能です。まずはエレベーターを導入するにあたり、知っておくと建物の価値向上に貢献できる機能を紹介します。
乗り心地や速度に関わる巻上機
巻上機はエレベーターを動かす装置です。巻上機によってエレベーターの振動や速度が変わるので、エレベーターの質を決める重要な役割を担っています。三菱乗用エレベーターでは、標準型に加えて3つの巻上機を特注することが可能です。
機械室レス用低速巻上機*1
低速エレベーター用の巻上機です。三菱電機ならではの「ポキポキモータ技術」を応用した永久磁石(PM)式モーターを採用しており、良好な乗り心地と省エネ性能に優れています*2。機械室が不要のため、屋上にスペースが必要となることがありません。
高速薄形巻上機*1
独自の技術によって、高速化と薄型化を両立させた巻上機です。制御盤も小型化されているので、業界最小クラスの機械室となっています。これにより、高速エレベーターの省スペース化に貢献しています。
高速大容量巻上機*1
高速のみならず超高速エレベーター用巻上機を動かすために、希土類永久磁石式モーターを業界で初めて製品化しました。電磁石と異なり、磁力を起こすための電流が不要で、騒音と振動が少ない快適な乗り心地を実現しています。
待ち時間を短縮する2つの機能
商業施設など、乗降客数が多いエレベーターは待ち時間が長くなるケースがあります。その悩みを解消するために、三菱電機のエレベーターは2つの機能を開発しました。
スーパー可変速システム
スーパー可変速システムは次のような効果があります*3。
・乗車時間最大32%短縮
・平均速度最大47%向上
・待ち時間最大22%短縮
(スーパー可変速システム無しの三菱電機製エレベーターとの比較)
エレベーターの乗員が定員未満のときや無人のときに運行速度を上げることで、上記の結果を実現することができました。
エレベーター行先予報システム エレ・ナビ*4
スムーズな移動を実現するためのシステムです。エレベーターホールに設置されているタッチパネルで行先階を選択します。そのままエレベーターに乗ると、再度ボタンを押す必要がなく、希望の行先階まで向かうシステムです。
また、セキュリティーシステムと連動することで、IDカードやハンズフリータグを用いてエレベーターの行先階を自動で登録し、入退館ともにタッチレスでエレベーターの利用が可能になります。
おもてなしの象徴であるユニバーサルデザイン*4
海外客の利用なども視野に入れて、誰にでも使いやすいエレベーターを設置することはユーザーの満足度向上につながります。
アナウンス・表示の多言語化
アナウンスと液晶表示について日本語・英語・中国語・韓国語の4ヵ国語に対応できます。時期や地域によっては海外客の需要が高いこともあり、多言語表示であることは海外のユーザーにとって安心材料です。
カラーユニバーサルデザインを採用
色覚の個人差を問わずに使えるように、カラーユニバーサルデザインに配慮したボタンや液晶のデザインを採用しています。こちらはNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構によって認証も受けているデザインです。
経営にもメリットがある省エネ性能*4
エレベーターの管理費を抑えることは、経営面でのメリットがあります。また、省エネ性能を搭載した設備を使用していることは建物のイメージアップにも貢献する、一石二鳥の機能です。
長寿命のLED照明
LED照明を使用することで次のような効果が得られます。
・寿命約3.3倍
・電気代約1/3~1/2
・CO2排出量マイナス38.4~229.2kg/年
(従来の三菱電機製蛍光灯と比較)
省エネだけでなく、電気寿命が延びることは交換の手間を減らすこととなるので、LED照明はメリットの多い機能です。
消費電力の削減
エレベーターの待機時に照明や機器の消費電力を削減したり、2台以上ある場合に分散待機するシステムを導入したりすることで消費電力を削減することができます。三菱電機のAXIEZシリーズで従来と現行のモデルを比較した際、基本仕様で最大20%の省エネを実現しました。
出所)三菱電機ビルソリューションズ エレベーター Ecology
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/elevator/axiez/index.html用途別エレベーターの特徴
実際にエレベーターを設置する際には、どのような点を意識するとよいのでしょうか。用途に合わせて解説します。
集合住宅用
集合住宅は足腰の弱い人、ベビーカーや車いすの人も利用しやすい構造であることが求められます。充分な入口の広さを設けると出入りが楽になります。
高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則には階数が3階以上となる場合はエレベーターを設置することと定められているので、高齢者の入居が想定される3階以上の建物はエレベーターを設置するようにしましょう*5。
オフィス用
ビジネスシーンで求められるのはスムーズなフロア移動です。仕事の効率化を図るために待ち時間が少ないシステムを選ぶようにしましょう。複数台設置されているビルには、スーパー可変速システムなどの導入が効果的です。来客のあるオフィスであれば快適な乗り心地や空間も重要となります。
商業施設用
ショッピングセンターや百貨店などは人の流れが多く、安全かつ快適に乗り降りできる設備が必要です。広い間口や、複数個所に行先ボタンを設置することでお客様のニーズに応えることができます。
ホテル用
ホテル用で大切なことは清潔感や高級感です。お客様をおもてなしするにふさわしい素材やデザインを選ぶとイメージ向上につながります。24時間稼働することを考えて騒音が少ないモデルの選択や、海外客の利便性を考えて多言語対応のモデルの選択も検討しましょう。
検討するべきエスカレーターの機能
エスカレーターを検討する際は大きく「安全性能」と「省エネ性能」の側面で検討します。エスカレーターは形がほとんど決まっているため、三菱電機における有償付加仕様の機能を紹介します。
エスカレーターの安全性能
エスカレーターは靴の巻き込み事故や、歩かないことを推進するなど、安全面に関して気を付ける事例が取り上げられます。安全性能を向上させるためには、どのようなオプションがあるのでしょうか。
視認性向上のステップ*6
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社 三菱エスカレーターp.1
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-1-ca747.pdfステップの視認性を高めるために四辺すべてを黄色に縁どることが可能です。通常はコの字型に黄色く縁どられていますが、四辺を黄色にすることで乗降口やステップがより分かりやすくなります。
巻き込み防止のスカートガードプラス*6
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社 三菱エスカレーターp.2
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-1-ca747.pdfスカートガード全体にブラシを装着することで、ステップの端に立つことを防ぎ、靴や衣類の巻き込みを防ぐことができます。
エスカレーターの省エネ性能*7
エスカレーターにもエレベーターと同様に省エネ性能を搭載することができます。三菱電機でオプションとして利用できる性能には、自動運転機能があります。
センサーによって利用者がいないとき、運転を停止または低速運転へ変更する機能です。利用者がいないときに低速にする機能は基本性能から約30%、利用者がいないときに停止する機能は約40%の省エネを実現できます。
エスカレーターの種類
エスカレーターにもさまざまな種類があります。設置を考えている場所に適した形を選びましょう。
省スペース型*8
すでにある施設や狭いスペースにエスカレーターを増設するときは、設置スペースが問題となることがあります。そのときに選択肢となるのが省スペース型のエスカレーターです。エスカレーター幅を通常よりも220mmほど狭くしたデザインがあります。一人乗り対応の型もあり、増設には便利なサイズです。
スパイラル型
出所)三菱電機ビルソリューションズ株式会社 三菱スパイラルエスカレーター
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/20100329.pdf1985年に三菱電機が開発してから、他のどの会社にも製造できないスパイラル型。こちらは非常に目を引くデザインなので、世界中の商業施設などに設置されています。数少ないデザインなので、差別化を図るための選択肢となります。
動く歩道
空港やターミナル駅に設置されることの多い動く歩道。こちらも通常のエスカレーターと同様の自動運転機能や、オートアナウンス機能がオプションとして選択できます。
機能を知って用途に適した種類を選びましょう
エレベーターとエスカレーターには数多くの種類があります。種類や機能に迷うことがあるかもしれませんが、大切なのはユーザーが安心して使用できることです。どのような人が使うのか、どのくらいの人が使うのか等、幅広い視点で考えて導入することが必要となります。
機能は常にアップグレードされていきます。アンテナを張って最適な設備を保ち、エレベーターやエスカレーターによって建物の価値を向上させましょう。
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法令検索 高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則第34条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413M60000800115_20220518_504M60000800043
*6
三菱電機ビルソリューションズ株式会社 三菱エスカレーターp.1-2
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-1-ca747.pdf
*7
三菱電機ビルソリューションズ株式会社 三菱エスカレーターp.6
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-1-ca747.pdf
*8
三菱電機ビルソリューションズ 三菱省スペース形エスカレーターp.1
https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/catalog/pdf/c-c01-4-c6759.pdf