• 更新日:2023.10.19
  • 作成日:2023.01.18

ビジネスでの留意点も解説! エレベーターマナーは公共性、安全性、柔軟性がポイント

コミュニティスペースであるエレベーターを皆が気持ちよく利用するためにはマナーが必要です。
エレベーターは機械であり、狭い密室でもあります。そのため、マナーは単に礼儀作法にとどまらず、安全確保にも直結しています。

狭い「かご」(人が乗る部分)に乗り合わせた者同士は、大げさにいえば、束の間の運命共同体。それぞれの利用者が同乗者に配慮することが、全体の安全と快適さにつながります。

また、ビジネスでのエレベーター利用には、独特のマナーがありますが、それは一般的なエレベーターマナーにおける留意点が前提となっています。

快適に、また安全にエレベーターを利用するために、一般的なエレベーターマナーを確認した上で、ビジネスシーンにおける留意点についてもみていきましょう。

乗り降りするときのマナー

まず、乗る前から降りるまでのマナーをシーンごとにみていきます。

エレベーターホールで待つ間

安全のためにも、各階のエレベーターホールで到着を待つ人のためにも、スムーズな乗り降りを心がけることが大切です。*1
そのためには、エレベーターを待つ間、どこに立てばいいのでしょうか。

エレベーターは電車と同様、降りる人が優先です。
したがって、扉の真ん前に立っていると、扉が開いたとき、降りようとする人の邪魔になってしまいます。それだけでなく、降りてきた人とぶつかって思わぬ事故につながってしまうかもしれません。

特に乗り降りに関するエレベーターマナーは、電車のマナーに通じるものがあります。そのことを頭の片隅に入れておくと、迷ったときに役立つのではないでしょうか。

エレベーターホールでは、降りる人のスペースを確保するために、扉の脇で待ちましょう。

エレベーターの扉が開いたら

上述のように、エレベーターは降りる人が優先です。
かごの出入口付近にいるときは、自分が降りない場合でも、後ろの人が降りやすいように、一旦エレベーターホールに出ます。*1

かご内の操作盤の前にいる場合は、乗り降りする人のために「開」ボタンを押し続けます。そうすれば、乗り降りする人が扉に挟まれる心配なく、安心して行動することができるでしょう。

かごの中に誰も乗っていない場合には、エレベーターホールにいる人が下の図1のように外の操作盤で「開」ボタンを押し続けることで、乗るのに時間がかかる人をサポートすることができます。

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図1 操作盤の前に立つ人は「開」ボタンを押してサポート

出所)三菱電機ビルソリューションズ「マナーと気配り」

https://www.meltec.co.jp/owners/building-management/manage/1173201_1142.html

エレベーターを待っていた人は、降りる人が全員降り、一旦エレベーターホールに出ている人も乗り終わったら、乗ります。その際、体の不自由な人や高齢者、あるいは子連れの人などがいたら順番を譲りましょう。
後述しますが、ビジネスシーンでも、こうした他者への配慮や思いやりはマナーの基本です。

雨や雪の日は、乗る前に傘などに付いた水滴を払ってから乗ります。水滴でかごの床が濡れると、転倒につながることもありますので、注意が必要です。

かご内の操作盤の前にいたら、新しく乗り込んできた人に行先階を聞き、その人の代わりにボタンを押します。

安全のためのマナー

ここでは、安全上、特に注意すべきマナーをご紹介します。

「一般社団法人 日本エレベーター協会」は、エレベーターを利用する際の誤った行為に対して、3段階の危険度レベルを設けています。*2
そのうち、危険度が高い順にみていきましょう。

「危険」レベルに関するマナー

「危険」は最も危険度が高く、「利用者が取り扱いを誤った場合、死亡又は重傷を負うことがあり、かつ、その切迫度合いが高いこと」に該当するものです。*2

定員・積載量を守る

到着したエレベーターに大勢の人が乗っている場合は無理に乗り込まず、次の到着を待つようにしましょう。*2
無理に乗り込むと、定員・積載量がオーバーし、エレベーターは動きません。

筆者もときどき見かけるのですが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、定員や積載量に余裕をもたせ、エレベーター内でもある程度のフィジカル・ディスタンス(人と人との物理的距離)を確保する方針をとっている施設もあります。

ちなみに、厚生労働省によると、エレベーターには換気扇や換気口が設置してあることが多く、エレベーター内で他の人と接する時間も非常に短いため、マスクを着用し、会話をしなければリスクレベルは低く、感染の心配はないとのことです。*3

扉にひも状のものを挟まないように注意する

ひも状のものが扉に挟まれたままエレベーターが動くと、大事故が起こるおそれがあります。*2
「ひも状のもの」とは、例えばペットのリードやマフラー、なわとびなどです。

ペット同伴の外出や犬の散歩でエレベーターを利用する際には、ペットと離れないようにリードを短くまとめて持ったり、ペットを抱えると安心です。
乗るときにもしリードを挟んでしまったら、リードから手を離し、すぐに「開」ボタンを押します。

かご内に乗り込んだときに、衣類やひも状のものなどを扉に挟んだときは、すぐに「開」ボタンを押し、取り除きましょう。

「警告」レベルに関するマナー:飛び乗りはしない

次は、上から2番目の危険度「警告:利用者が取り扱いを誤った場合、死亡又は重傷を負うことが想定されること」に該当するものです。*2

走って飛び乗ると、閉まりかけた扉にぶつかったり、挟まれたり、転倒したりしてケガをするおそれがあります。

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図2 飛び乗り禁止


出所)一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターを安全、快適にご利用いただくために」

https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/elevator.html

また、他の利用者と衝突し、ひとを巻き込んだ思わぬ事故になることもあります。
非常に危険な行為だということを認識し、次の到着を待てるだけの時間と心のゆとりを持ちましょう。

「注意」レベルに関するマナー

最後は、「注意:利用者が取り扱いを誤った場合、傷害を負うことが想定されるか又は物的損害の発生が想定されること」に該当するマナーです。*2

敷居の溝にゴミや物を落とさない

敷居の溝に、ゴミや小石、落し物などが詰まると、ドアが動かなくなります。うっかりしてしまいがちですが、ちょっとした不注意でトラブルを引き起こさないように気をつけましょう。

禁煙

エレベーター内はもちろん禁煙です。*2
かご内での喫煙は、同乗者に迷惑をかけるだけでなく、火災の原因になることもありますので、絶対に慎まなければなりません。

ビジネスでの留意点

ここからは、ビジネスでエレベーターを利用する場合のマナーについてみていきます。

乗る順番はそのときの状況次第

「一般社団法人 マナー教育推進協会」の代表理事副会長の金森たかこ氏は、来客応対における訪問者へのエレベーターマナーを次のように示しています。*5

上下ボタンは必ず案内人が押し、エレベーターを待ちます。
問題は乗る順番ですが、それはそのときの状況によって変わります。

もし、到着したエレベーターに誰も乗っていない場合は、案内人が先に乗ります。それはなぜでしょうか。
冒頭でも述べたとおり、エレベーターは密室です。金森氏によると、その密室でお客様を1
人にしないようにする気遣いや、危険物がないか安全確認をする配慮が必要だというのです。

中に入ったら、操作盤の前に立ち、「開」ボタンを押しながらもう片方の手で扉を押さえ、お客様に乗っていただきます。

一方、かご内に誰か乗っていた場合は、外の操作盤で「開」ボタンを押し、上の場合と同様に、もう片方の手で扉を押さえながら、お客様に先に乗っていただきます。
お客様が複数人の場合、案内人は最後に乗り込み、もし操作盤の前に立てたら、行き先階のボタンを押します。

では、操作盤の前に既に他の人が立っていたらどうすればいいのでしょうか。
その際は無理に操作盤の前に移動しようとせずに、操作盤の前にいる人に行き先階のボタンを押してもらいます。

乗るときには、このようにそのときどきの状況に合わせて柔軟に対応することが大切です。

席次を気にする方もいらっしゃるかもしれませんが、案内人は操作盤の前など入口に近いところに立ち、お客様には奥に乗っていただくと考えればいいでしょう。

降りるときはお客様が先

一方、降りるときには、お客様が優先です。*5
その際、上述のとおり、お客様が安全に降りられるように「開」ボタンを押し、もう片方の手で扉を押さえます。
案内人が降りるのは、お客様が全員降りた後です。

エレベーターの中では私語を慎む

最後にかご内での留意点を確認しましょう。
マナー教室「清紫会 新・作法学院」の近藤珠実氏は、会話や電話を控えることも大切なマナーだとしています。*6
これは周りへの配慮というだけでなく、上述のように、新型コロナウイルスの感染防止策としても有効です。

さらに、それはコンプライアンス上の留意点でもあります。例えば、気の置けない社員同士がエレベーターに乗り合わせたときは、つい気が緩んでしまうことがあるかもしれませんが、その話を誰が耳にしているかわかりません。他の人に聞かれて困る話は控えましょう。

おわりに

乗っている時間はごく短時間であっても、密室だけに、エレベーター内は濃厚な空間だといえるでしょう。
マナーのポイントを把握し、公共性と安全性に配慮して柔軟に対応することは、同乗者全員のより快適で安全な利用につながるでしょう。

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*1
三菱電機ビルソリューションズ「マナーと気配り」
https://www.meltec.co.jp/owners/building-management/manage/1173201_1142.html

*2
一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターを安全、快適にご利用いただくために」
https://www.n-elekyo.or.jp/instructions/elevator.html

*3
厚生労働省「接客業務における 新型コロナウイルス 感染予防・対策マニュアル」p.29
https://www.mhlw.go.jp/content/000786045.pdf

*4
一般社団法人 日本エレベーター協会「エレベーターの安全な利用について」
https://www.n-elekyo.or.jp/about/pdf/20210922_anzen.pdf

*5
金森たかこ(一般社団法人 マナー教育推進協会の代表理事副会長)『入社1年目 ビジネスマナーの教科書』株式会社プレジデント社(電子書籍版)p.130

*6
読売新聞オンライン「月間Team8 おおにしの大人スタイル」(2021/01/27 10:05)
https://www.yomiuri.co.jp/team8/nara/20210127-OYT8T50010/

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