• 更新日:2023.11.13
  • 作成日:2023.01.17

エレベーターのPOG契約とフルメンテナンス契約の違いは? | 契約上のチェックポイントも弁護士が解説

エレベーターの保守・点検に関する契約は、「POG契約」と「フルメンテナンス契約(FM契約)」の2種類に大別されます。マンションやオフィスビルのオーナーの方は、築年数や管理予算などを考慮したうえで、ニーズに合ったタイプの保守・点検契約を締結してください。

今回は、エレベーターのPOG契約とフルメンテナンス契約の違いや、契約上のチェックポイントなどを解説します。

POG契約とフルメンテナンス契約の違い

POG契約とフルメンテナンス契約は、いずれもエレベーターの保守・点検に関する契約です。両者の違いは、仕様書によって予定される保守・点検業務の内容・範囲にあります。

POG契約とは

POG契約の「POG」とは、”Parts” “Oil” “Grease”の頭文字をとったものです。

POG契約では、メンテナンス業者がエレベーターの装置・部品についての全面的な点検と、保守に必要な消耗品(電球・ヒューズ・リード線・オイルなど)の交換・補充が保守料に含まれています。

その反面、故障や劣化した部品の交換・修理などは保守料に含まれていないため、別途見積もりのうえで依頼することになります。

フルメンテナンス契約とは

フルメンテナンス契約でも、メンテナンス業者がエレベーターの装置・部品についての全面的な点検を行います。点検業務の内容については、POG契約とフルメンテナンス契約の間に違いはありません。

ただしフルメンテナンス契約の場合は、消耗品の交換・補充のみならず、故障や劣化した部品の交換・修理についても、月々の保守料に含まれています。

POG契約のメリット・デメリット

POG契約は、フルメンテナンス契約に比べて、毎月支払う保守料を低額に抑えられるメリットがあります。

その反面、突発的な故障修理や部品の交換などが必要となった場合、別料金にて依頼しなければなりません。特に、大きな故障等が発生した場合には多額の出費が発生し、結果的にフルメンテナンス契約よりも高くついてしまう可能性があります。

フルメンテナンス契約のメリット・デメリット

フルメンテナンス契約は、メンテナンス・サービスの範囲が広い分、POG契約よりも毎月の保守料は高くなります。

その一方で、エレベーターに不測の故障が発生した場合には、追加の保守料を支払うことなく修理してもらえます。つまりフルメンテナンス契約には、ビルオーナーにとっての「保険」のような要素が含まれているといえるでしょう。

POG契約・フルメンテナンス契約のチェックポイント

エレベーターの保守・点検契約については、国土交通省が標準契約書を公表しています。

参考:
「昇降機の適切な維持管理に関する指針」等を公表~エレベーター等の安全性を維持するために~|国土交通省

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000607.html

国土交通省の標準契約書は、POG契約とフルメンテナンス契約のどちらについても利用できるものです。
契約の本文については共通して利用できる一方で、仕様書の一部である「取替え・修理の範囲」の記載によって、POG契約とフルメンテナンス契約が区別されています。

メンテナンス業者とPOG契約またはフルメンテナンス契約を締結する場合、ビルオーナーとしては、特に以下の各事項を重点的に確認してください。

業務内容を確認する

保守・点検業務の内容は、契約書に添付された仕様書に記載されています。
仕様書の中で特に重要なのは、「点検項目表」と「取替え・修理の範囲」の項目です。

点検項目表には、点検内容と各点検の周期が記載されています。国土交通省の標準契約書の内容と見比べながら、必要な点検が適切な周期で行われることを確認してください。

取替え・修理の範囲には、追加の保守料を要せず対応してもらえる取替え・修理の内容が記載されています。
POG契約であれば保守に必要な消耗品のみの対応、フルメンテナンス契約であれば全面対応とするのが基本的な考え方ですが、具体的な対応範囲は契約によって個別に定められます。
POG契約・フルメンテナンス契約のどちらであっても、想定している取替え・修理がきちんとカバーされていることを確認しましょう。

保守料の金額・支払方法を確認する

エレベーターのPOG契約・フルメンテナンス契約の保守料は、月額制で定めるのが一般的です。ただし、金額や支払方法はまちまちなので、必ず契約書の内容を確認してください

契約の有効期間と更新条件を確認する

POG契約・フルメンテナンス契約の有効期間と更新条件についても確認しておきましょう。

特に、契約の自動更新に関する規定には注意が必要です。国土交通省が提示している標準契約書では、有効期間満了日の90日以上前に書面で申入れを行わない限り、契約が1年間自動更新されることになっています。

まとめ

エレベーターの保守・点検は、ビル経営におけるコストに当たりますが、入居者・利用者の利便性や安全の観点から欠くことのできないものです。
ビルオーナーとしては、POG契約とフルメンテナンス契約という2つの選択肢がある中で、エレベーターの故障リスクと月々の予算を天秤にかけて、ご自身のニーズに合った方を選択してください。

また、POG契約・フルメンテナンス契約のいずれについても、業者によって契約内容が若干異なっています。エレベーターの保守・点検を依頼したい場合には、信頼できるメンテナンス業者へ相談して決めることが望ましいでしょう。

MAIL MAGAZINE

ビルに関わるすべての方に!ちょっと役に立つ情報を配信中

メール登録

この記事の著者

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

RANKING

ランキング