• 更新日:2023.11.13
  • 作成日:2023.01.18

エレベーター内で地震に遭遇したらどう対応する? 閉じ込められた場合の対処法は?

エレベーターは、地震に遭遇しても乗っている人の安全をまもる仕組みを備えています。

ただ、揺れの大きさによって異なる動きをします。

そこで今回は、エレベーターが地震発生時にどのような動きをする機能を備えているのか、また、地震でエレベーターに閉じ込められた場合はどのように対応すれば良いのかをご紹介します。
防災に役立ててください。

地震によってエレベーターが停止する割合

平成30年6月に、大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が発生しました。

このとき、近畿2府3県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)を中心に、和歌山県や岐阜県なども含めた広範囲でエレベーターの停止が約63,000台発生しています(図1)。

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図1 大阪北部地震でのエレベーターの休止・閉じ込めの件数

(出所:「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001354002.pdf p3

震度6弱を記録した大阪府では55.8%、京都府、奈良県でも半数近くのエレベーターが停止し、また、近畿地方全体では346台の閉じ込めが発生しました。しかし国土交通省によると、人身事故は起きていません*1。

地震発生時のエレベーターの動き

さて地震が発生した時、エレベーターの運転装置は下のように、地震の揺れの強さを示す「ガル」の大きさによって異なる動きをします(図2)。

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図2 地震発生時の運転装置の反応

(出所:「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001354002.pdf p6

地震波にはP波とS波があり、一般的にはP波が先に感知され、その後S波が伝わります。

エレベーターはP波を感知した段階で、まず最寄りの階に向かう動きをします。しかしS波が到来した時に地震の揺れの強さ(加速度)を表す「ガル(Gal)」の高さにより、その後の動きは異なります。

S波のガルの強さによって、エレベーターはこのように動くことになります。

・S波を感知しなかった場合=いったん最寄り階に停止してドアを開き、一定時間後に通常運転を再開
・低いガルのS波を感知した場合=最寄り階に停止してドアを開き、その後運転休止
・高いガルのS波を感知した場合=その場で運転休止

エレベーターへの閉じ込めが起きるのは、この「高いガル」に対する感知器が作動した時です。この場合、エレベーターに損傷がなくても、技術者の点検を受けるまでは復帰しません。

なお、旧型のエレベーターの場合は、P波ではなくS波の検知後に最寄り階に止まる動きを始めるものもあります。

エレベーター内で地震に遭遇したら?

では、エレベーターに乗っている時に地震が発生したら、どのような対応を取れば良いでしょうか。

揺れを感じたとき

上記のように、エレベーターは、基本的には一定以上の揺れを感じると最寄り階で自動停止するようになっています。
しかし、まずは全ての階のボタンを押し、最初に停止した階で降りるようにするとより安全です。
なお、最寄り階に到着して扉が開いても、一定時間経過すると扉は閉まります。その後もエレベーターの中から扉を開けることはできますが外から開けることはできませんので、扉が閉じる前にエレベーターから出るようにしましょう。

閉じ込められてしまったとき

まずはインターホンで通報します。状況を正確に伝え、救助を待ちます。

なお冒頭に紹介した大阪北部地震の場合、乗っている人の救出までの時間は、ほとんどが「3時間以内」でした(図3)。

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図3 大阪北部地震でのエレベーター閉じ込めかたの救出時間

(出所:「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001354002.pdf p11

3時間を超えたケースについては、原因ははっきりとしています*2。
ひとつは公共交通機関の停止や交通渋滞により、技術者の到着が遅れたというものです。そしてもうひとつは、電話回線の混雑で技術者と迅速な連絡が取れなかった、という、いずれも外部要因です。
特に都市部ではよくあることですので、慌てないことが重要です。

停電が発生したとき

地震によって停電が発生した場合、エレベーターでは非常用バッテリーを使って非常用照明が点灯します。かごの中が真っ暗になるということは基本的にはありません。
しかし、外部のオペレーターとの通話ができなくなる可能性があります。
その場合でも、携帯電話などを使って誰かと連絡が取れれば、状況を把握してもらえます。

建物からの避難が必要なとき

そして最も重要なのが、建物からの避難が必要な場合です。
建物からの避難にあたっては、エレベーターは使用しないようにしましょう。

仮にエレベーターが通常運転に戻ったとしても、センサーの反応や余震・故障などで再び緊急停止する可能性があるからです。

普段からできるエレベーターでの防災

東日本大震災のときには、エレベーターの中に9時間にわたって閉じ込められた人もいるということです*3。

大地震になれば、各種のレスキューにあたる消防隊員の人数も限られています。また、がれきなどが散乱すれば従来の時間で救助に向かえるというわけではありません。

まず、乗っている人が声をかけ合うなどして落ち着きを保つことが重要です。

そして、日頃の防災の観点からみると、エレベーターホールに防災グッズを置くというのも有効な手段になりそうです。
エレベーターの中から出られても、それが救助の全てと言えない場合があるからです。

この場合、エレベーターを降りてすぐに利用できる懐中電灯や防寒シート、糖分補給に役立つものを備えておくのも良いでしょう。
エレベーターの中にそう多くの荷物は置いておけないという場合でも、懐中電灯、防寒シートやホイッスルなど、コンパクトに収まるものは常備すると良いでしょう。
携帯ラジオなども便利です。狭い空間に閉じ込められた時、情報収集に使える道具はとても大切です。

また、エレベーターの中に、非常時にとるべき行動をポスターなどにして掲示しておくことをお勧めします。
日本エレベーター協会が作成しているリーフレット*4などが役に立ちます。

エレベーターは狭い空間であるという特徴があります。
そして、防災上大切なのは「パニックに陥らないこと」です。
日頃から非常時に対する知識を持ち、落ち着いて正しい対応を取れるようにしておきましょう。

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*1、2
「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001354002.pdf p3、p11

*3
「地震でエレベーターに閉じ込められた時の対処法 大橋拓アナが体験」NHK首都圏ナビ
https://www.nhk.or.jp/shutoken/shutobo/20220530a.html

*4
「もしもの地震に備えて知っておきたいエレベーターの安全知識①」日本エレベーター協会
https://www.n-elekyo.or.jp/about/pdf/poster_safety_02.pdf


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