• 更新日:2023.11.13
  • 作成日:2023.03.02

「ビル管理士」の資格とは? 業務内容や試験内容と合格率、例題などを紹介

ビルには様々な設備が配置されており、利用者の快適性や安全を守るにはそれぞれが正常に稼働し続けている必要があります。また、ビルは衛生的環境を維持し運営されなければなりません。

そのために欠かせないのがビルメンテナンスですが、誰にでもできるものではありません。

法律上、建築物の所有者は、メンテナンスについてアドバイスや指導を受けるために建築物環境衛生管理技術者の免許を持つ人を監修者として選び、契約しなければならないのです。

よって建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理士 以下同じ)はその建物に対する事実上の最高責任者でもあり、国家資格を必要とする仕事です。

ビル管理士の業務内容と資格についてご紹介します。

ビル管理士の仕事とは

ビル管理士は、正式には「建築物環境衛生管理技術者」といいます。

そして、法律では、特定建築物所有者等は、その特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督させるため、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任し監督をさせなければなければならない、とされています*1。

なお、特定建築物とは以下のようなものをさします*2。

1)興行場(映画館、劇場、音楽会用のホール等)
2)百貨店等
3)集会場
4)図書館、博物館、美術館
5)遊技場(ボーリング、ダンスその他遊技をさせる施設)
6)店舗
7)事務所
8)学校
9)旅館

多くのビルは上記のいずれかに属することでしょう。これらの建築物の所有者は、ビル管理の監督者としてビル管理士と何らかの契約をしなければならない、というのが法律の内容です。

そして、ビル管理士の実際の業務は以下のようなものです*3。

1)管理業務計画の立案
2)管理業務の指揮監督
3)建築物環境衛生管理基準に関する測定または検査結果の評価
4)環境衛生上の維持管理に必要な各種調査の実施

また、建築物環境衛生管理技術者は、維持管理が管理基準に従って行われるようにするため、必要がある場合には、建築物維持管理権原者に対して意見を述べることができます。

ビル管理士になるには

ビル管理士になるには、下記いずれかの条件を満たしている必要があります*4。

・厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習会の課程を修了した者
・厚生労働大臣が行う試験に合格した者

それぞれのパターンについてご紹介します。

講習会の修了で資格を取る場合

厚生労働大臣の登録を受けている「日本建築衛生管理教育センター」では、以下の講義を終えると修了証書が交付され、申請すれば免状をもらうことができます(図1)。

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図1 建築物環境衛生管理技術者講習の内容と時間

(出所:「建築物環境衛生管理技術者講習会」日本建築衛生管理教育センター)

https://www.jahmec.or.jp/koushu/kanrigijutu.html

ただし、講習会場が限られている点と、受講資格があることに注意しなければなりません。
卒業した大学や短大・高専の学部、それ以外の文系出身者に応じた一定のビル管理に関する実務経験が必要です*5。受講料は108,800円です。
なお、定員が限られていることにも注意が必要です。

試験で資格を取る場合

次に、いきなり試験を受けて資格を取る場合です。
ただし、この場合も、下記の施設での環境衛生上の維持管理に関する実務経験が2年以上あることが受験の前提になっています*6。

ア)興行場(映画館、劇場等)、百貨店、集会場(公民館、結婚式場、市民ホール等)、図書館、博物館、美術館、遊技場(ボーリング場等)

イ)店舗、事務所

ウ)学校(研修所を含む。)

エ)旅館、ホテル

オ)その他アからエまでの用途に類する用途

多数の者の使用、利用に供される用途であって、かつ、衛生的環境もアからエまでの用途におけるそれと類似しているとみられるものをいいます。

なお、倉庫や駐車場、工場などでの経験は実務経験の対象になりません。

そして、具体的な試験科目は講習科目と同様、以下の7つです*7。

1)建築物衛生行政概論
2)建築物の構造概論
3)建築物の環境衛生
4)空気環境の調整
5)給水及び排水の管理
6)清掃
7)ねずみ、昆虫等の防除

受験料は13,900円(2022年)です。

ビル管理士試験の例題と合格率

さて、試験についてご紹介します。
ビル管理士の試験問題の一例として、「空気管理の調整」の分野からは過去に以下のような問題が出されています(図2)。

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図2 過去問題の一例(2021年)

(出所:「過去の試験問題と合格基準・正答一覧」日本建築衛生管理教育センター)

https://www.jahmec.or.jp/kokka/shiken_pdf/2021/2021shiken_am.pdf p1

上記は法令などに関する知識を問う問題です。同時に、もちろん具体的な知識に関する設問もあります(図3)。

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図3 過去問題の一例(2021年)

(出所:「過去の試験問題と合格基準・正答一覧」日本建築衛生管理教育センター)

https://www.jahmec.or.jp/kokka/shiken_pdf/2021/2021shiken_am.pdf p10

なお、令和3年の秋実施の試験での合格率は17.7%でした*8。

直近の受験者数や合格率は下のように推移しています(図3)。

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図3 過去3年間の合格率

(出所:「『第51回建築物環境衛生管理技術者試験』の合格発表」厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21847.html

なお、過去問題の一例は日本建築衛生管理教育センターのサイトで公開されています*9。
参考にしてみてください。
全科目トータル180問のなかで、科目毎の得点が各科目の満点数の40%以上であって、かつ、全科目の得点が全科目の満点数の65%以上が合格条件です*10。

試験は年1回で試験地は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡です。

ビル管理のエキスパートになる前に

ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)は、ビル管理に関する最高峰の資格とも言えるでしょう。設備だけでなく、ビルそのものに対する知識も必要とされます。
実際、合格率は高いものとは言えませんので、それなりの準備がない限り一発合格を狙うのは簡単とは言えませんし、実務経験が前提になっていることに注意が必要です。

そこで、ビル管理士に先立って、実務経験を積む上での関連資格を取得しておくという方法もあります。

例えば電気工事士、危険物取扱者、ボイラー技士、冷凍機械責任者や衛生管理者など、現場に即した知識や経験があれば、ビル管理について理解は深まりますし、現場ではどのようなことが起き、どのようなスキルが必要なのかを知ることもできます。

ビル管理士の業務である管理業務の立案や監督、検査結果の評価などは現場レベルの知識無くして成り立ちません。

利用者の安心・安全を守ることは、利用者の財産や命を守ることと同様、とても重要な役割です。

計画的かつ包括的に知識を積み重ね、段階を踏んで資格取得に臨むことをおすすめします。

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*1、3、4
「建築物環境衛生管理技術者について」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei11/index.html

*2
「建築物環境衛生管理技術者講習会」日本建築衛生管理教育センター
https://www.jahmec.or.jp/koushu/kanrigijutu.html

*5
「建築物環境衛生管理技術者講習会 受講資格一覧表」
https://www.jahmec.or.jp/pdf/koushu/jyukoshikaku.pdf

*6、7 、9
「建築物環境衛生管理技術者 試験について」日本建築衛生管理教育センター
https://www.jahmec.or.jp/kokka/

*8、10
「『第51回建築物環境衛生管理技術者試験』の合格発表」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21847.html

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