• 更新日:2023.06.13
  • 作成日:2023.03.02

人手不足を救うための「ラストワンマイル」解消 欠かせないロボットの仕事の数々

日本企業全体で人手不足が問題になっている中、物流の現場ではとくに「2024年問題」が取り沙汰されています。

コロナの感染拡大で物流が重要インフラとして広く認知されたこと、また、2024年4月からの働き方改革関連各法律の施行により、トラックドライバーに対して時間外労働の上限規制が適用されることによって人手不足がさらに加速することが想定されています*1。

また、化石燃料によるCO2排出量を削減するためにも、最終的な配送拠点から到着地までの「ラストワンマイル」をいかに効率的に運送するかは世界的な課題になっています。

そこで期待されているのが、ロボットの活躍です。

物流分野での人手不足

現在、運輸・郵便といった物流分野では他の産業に比べ人手不足感が強まっています(図1)。

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図1 物流分野での労働者不足

(出所:「最近の物流政策について」国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/common/001388194.pdf p3

コロナを機に通信販売の利用が増加した一方で、2024年度からは自動車運転業務の従事者に対して時間外労働の上限が設けられます*1。
この上限設定によってますます人手不足が深刻化すると考えられています。

そこで注目されているのが配送センターから届け先までの「ラストワンマイル」を無人化する技術です。ロボットの導入により、物流現場にさまざまなメリットをもたらすことができます(図2)。

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図2 ロボットによるラストワンマイル物流のメリット

(出所:「自動走行ロボットの社会実装に向けて」経済産業省

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/pdf/pre_001_04.pdf p3

また、海外ではラストワンマイルにおけるCO2排出量が問題視されており、GPSを装備したロボットを使った短距離配送の実験や導入が進んでいます。環境対策としてのロボット導入も注目されているのです(図3)。

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図3 海外での配送ロボット事例

(出所:「第3回 ⾃動⾛⾏ロボットを活⽤した配送の実現に向けた官⺠協議会」国土交通省)

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/pdf/003_03_00.pdf p9

また、短距離の配送手段として、海外ではドローンの利用も積極的に検討されています。

アメリカで行われた実験では、小型ドローンを利用した場合はディーゼルトラックに比べてCO2排出量が数十パーセント削減されたという結果も出ています*2。

ビル内でもロボットによる搬送が課題解決

人手不足や環境対策として注目される屋外でのロボットによるモノの搬送ですが、さまざまな施設の中でも活躍が期待されています。

例えば医療施設の場合です。

病院内では薬剤や検体など、昼夜を問わず大量の搬送業務が行われており、大規模な病院では搬送専用のスタッフを採用しています。
それでも人手不足により、医療従事者が直接モノを運ばなければならないことも少なくないため、さらに現場の人手が足りなくなってしまうという現状があります。

そこで、医療機関での荷物の輸送をスムーズに行う手段としてロボットの利用方法があります(図4)。

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図4 医療施設での搬送ロボット利用例

(出所:「脱着型カート方式により、多様化する搬送需要へ対応、省力化にも貢献『多用途搬送サービスロボットシステム』を開発」三菱電機)

https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2021/pdf/0128-b.pdf p3

多くの人が行き交う医療施設ですが、ロボットにはセンサーや3Dカメラなどを搭載することで人や障害物を自動で回避できる機能もありますので、安全な搬送手段としても実証実験が始まっています(図5)。

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図5 医療機関での実証実験

(出所:「『多用途搬送サービスロボットシステム MELDY™』を開発」三菱電機)

https://www.mitsubishielectric.co.jp/automotive/project/interview03/index.html

また、商業施設の省人化にも自立走行ロボットは活躍しそうです。

例えば、買い物をする人が事前にアプリで商品を注文すると、ロボット店内を回って商品を集め、準備しておくという方法です(図6)。

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図6 商業施設での搬送ロボット利用例

(出所:「脱着型カート方式により、多様化する搬送需要へ対応、省力化にも貢献『多用途搬送サービスロボットシステム』を開発」三菱電機)

https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2021/pdf/0128-b.pdf p3

実は、買い物客の利便性を向上させるための搬送ロボットの活躍は、アメリカでも大きな脚光を浴びています。

アメリカの小売大手ウォルマートでは、車での商品受け取りサービスを一部店舗で導入しています*3。

これは、利用客が自宅などからインターネットで事前に注文した商品を、おもちゃや家電、医薬品から食料品まで幅広くかき集め、短時間でひとつにまとめます。生鮮食品は別途、人の手で集めてまとめられ、顧客が車で店舗に立ち寄れば、スタッフが荷物をそのまま車のトランクに入れてくれるというサービスです。

これによって顧客は車から降りることなく買い物を済ませることができるのです。

なお、倉庫内での荷物のピックアップからパッキングまで5分で済ませるというスピード感も注目されています。

搬送ロボットの活躍範囲は拡大へ

こうした搬送ロボットは、他にはオフィスビルでの書類や荷物の搬送にも役立つほか、観光客の案内、移動販売などでの利用など活躍の幅を広げることが期待されています*4。

少子高齢化による人手不足、企業の生産性向上、環境対策、生活者の利便性向上と、ロボットは社会の課題を解決する重要な存在でもあるのです。

人の社会生活にロボットが日常的に共存する日は、そう遠くはありません。

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*1
「トラック運送業界の2024年問題について」全日本トラック協会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/002_03_00.pdf P2
「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省、国土交通省、農林水産省
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf P11
「近年、物流・ロジスティクス業界の人手不足が深刻なのはなぜでしょうか?」中小機構
https://j-net21.smrj.go.jp/qa/startup/Q1451.html

*2
「Energy use and life cycle greenhouse gas emissions of drones for commercial package delivery」nature communications
https://www.nature.com/articles/s41467-017-02411-5 P2

*3
「ウォルマート、DXで早変わり 1500店からタワー撤去 ロボ集約型に」日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27F120X20C21A5000000/

*4
「自律移動ロボットプログラムサービスロボットプロジェクト」情報処理推進機構
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosoko_robot/pdf/005_14_00.pdf p6

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